宮次男

没年月日:1994/02/20
分野:, (学)

 日本美術史家で実践女子大学文学部教授の宮次男は2月20日午前9時30分、肺がんのため東京都田無市の病院で死去した。享年65。宮は昭和3年6月2日、三重県鈴鹿市南若松町で出生した。同28年3月、東北大学文学部東洋芸術史学科を卒業し、同29年5月同大学文学部助手となる。同30年9月に東京国立文化財研究所美術部技術員、同33年7月に文部技官に任官した。昭和35年5月には東京国立文化財研究所における共同研究「醍醐寺五重塔の壁画」で日本学士院恩賜賞を授賞した。同47年主任研究官となり、同52年には情報資料部に配置換となる。この年6月、「金字宝塔憂陀羅の研究」により東北大学より文学博士号を授与される。同53年4月には美術部第一研究室長に、さらに同57年4月には情報資料部長となる。同62年3月に東京国立文化財研究所を退官し、4月に実践女子大学文学部教授に就任する。宮の研究対象は日本中世絵画を中心とするが、その関心は多岐にわたっている。特に絵巻物研究では『日本絵巻物全集』への関与によってもたらされた幅の広さを基礎に、合戦絵・高僧伝絵・寺社縁起絵から御伽草子、奈良絵本や絵解き研究までも視野に入れ、数々の論考を残している。また日本中世期の代表的なジャンルと目される肖像画においても、前後をみわたした肖像画史をこころみるなど、先駆的な足跡を残している。しかし博士論文のテーマに代表される法華経をテーマとした仏教説話画研究への関心は、東北大学での思師故亀田孜教授への傾倒を示すかのように終始かわることはなく、宮の研究のパックボーンを形成している。晩年は十王経や「往生要集』に関わる絵画に関心を収斂させていたかに見うけられるが、その成果を世に問いはじめていた途上での逝去であった。美術史学会常任委員、民族芸術学会評議員をつとめた。東京国立文化財研究所名誉研究員。
定期刊行物所載論文など
1965年の歴史学界―回顧と展望―(史学雑誌75-5、昭和41年5月)
日本の合戦絵1 奥州十三年合戦絵巻(日本美術工芸333、昭和41年6月)
日本の地獄絵(日本美術土芸335、昭和41年8月)
日本の合戦絵2 源平合戦絵(日本美術工芸337 昭和41年10月)
長谷寺縁起(古美術15 昭和41年11月)
一遍聖絵の錯簡と御影堂本について(美術研究244、昭和41年12月)
伊保庄本北野天神縁起(古美術18、昭和42年7月)
後三年合戦絵巻(日本美術工芸348、昭和42年9月)
調馬図巻(古美術20、昭和42年12月)
図版解説 弥勅来迎図(美術研究250、昭和42年12月)
後三年合戦絵巻をめぐる三、三の問題 上、下(美術研究251、254、昭和43年2月、昭和44年2月)
「井田の法談」―一遍上人絵伝断簡―(古美術21、昭和43年3月)
聖徳太子伝絵巻(古美術21、昭和43年3月)
古画に見る笑い(日本美術工芸354、昭和43年3月)
雷神の美術(日本美術工芸359、昭和43年8月)
日本の地獄絵(古美術23、昭和43年9月)
十王地獄変相(古美術23、昭和43年9月)
時宗の絵巻(日本美術工芸362、昭和43年11月)
善光寺如来絵伝(古美術24、昭和43年12月)
目連救母説話とその絵画―日連救母経絵の出現に因んで―(美術研究255、昭和44年3月)
亀田孜博士の学風とその研究業績(文化33-1、昭和44年7月)
地蔵菩薩と目連尊者(日本美術工芸371、昭和44年8月)
足利義尚所持狐草紙絵巻をめぐって(美術研究260、昭和44年9月)
金光明最勝王経金字宝塔曼荼羅図私見(仏教芸術72、昭和44年10月)
大和文華館蔵「一遍上人絵伝」断簡をめぐって(大和文華51、 昭和44年11月)
拾遺古徳伝絵残欠(古美術28、昭和44年12月)
1969年の歴史学界―回顧と展望―(史学雑誌79-6、昭和45年6月)
絵巻入門1~34(本美術工芸390~425、昭和46年3月~49年2月)
善光寺如来絵伝(国華931、昭和46年3月)
研究資料 長谷寺縁起上、下(美術研究275、276、昭和46年11月、12月)
雪渓筆獅子・虎豹図屏風一双(古美術35、昭和46年12月)
谷文晃筆一偏上人絵伝(古美術36、昭和47年3月)
研究資料 公刊 長谷寺縁起 詞書(美術研究278、昭和47年3月)
拾遺古徳伝絵巻残欠―浄土開宗の段―(古美術38、昭和47年9月)
研究資料 西行物語絵巻 詞書公刊(美術研究281、昭和47年10月)
永徳元年の一遍上人絵伝残欠(古美術39、昭和47年12月)
一遍上人絵伝残欠(金光寺本)(古美術39、昭和47年12月)
立本寺蔵 妙法蓮華経金字宝塔曼陀羅図について(美術研究282、 昭和47年12月)
海北友雪筆徒然草絵巻(古美術40、昭和48年3月)
『平治物語』諸本中における平治物語絵巻の位置(美術研究289、 昭和49年2月)
地蔵霊験記絵巻について(仏教芸術97、昭和49年7月)
中世絵巻の展望(MUSEUM284、昭和49年11月)
弘法大師絵伝残欠(古美術47、昭和50年1月)
矢取地蔵縁起について(美術研究298、昭和50年3月)
東寺本弘法大師行状絵巻―特に第十一巻第一段の成立をめぐって―(美術研究299、昭和50年11月)
お伽草子絵巻―その画風と享受者の性格(国文学解釈と教材の研究 22―16 昭和50年12月)
説話と絵巻(文学45-1、昭和52年1月)
歓喜天霊験記私考(美術研究305、昭和52年3月)
古代・中世秘画絵巻考(アート・トップ39、昭和52年4月)
1976年の歴史学界―回顧と展望―(史学雑誌86-5、昭和52年5月)
金字宝塔曼茶羅 上、中、下 ―ユニークな仏教説話図―(日本美術工芸467~469、昭和52年8月~10月)
金字法華経絵について(金沢文庫研究257、昭和54年5月)
お伽草子絵巻と奈良絵本(萌春291、昭和54年9月)
御伽草子と土佐光信―鼠草紙絵巻考―美術研究313、昭和55年3月)
絵巻物に見る日本仏教―餓鬼草紙を中心として―(東洋学術研究19-1 、昭和55年4月)
鎌倉時代の美術 高僧伝絵と縁起絵(世界の美術(週刊朝日百科) )113 、昭和55年5月)
文学と絵巻のあいだ(国語と国文学675、昭和55年5月)
法華経の絵と今様の歌(仏教芸術132、昭和55年9月)
国宝・伴大納言絵巻(解説)(芸術新潮374、昭和56年2月)
芭蕉の風貌(太陽(別冊37)、昭和56年12月)
日本の説話画(古美術61、昭和57年1月)
日本の変相(国文学解釈と鑑賞47-11、昭和57年10月)
中世人生絵巻(芸術新潮395、昭和57年11月)
研究資料 白描西行物語絵巻(美術研究322、昭和57年12月)
絵解き≪昭和五十七年度大会シンポジウム記録≫(説話文学研究18、昭和58年6月)
宋・元版本にみる法華経絵(上) (下)(美術研究325、326、昭和58年9月、12月)
八幡大菩薩御縁起と八端宮縁起 上、中、下(美術研究333、335、336、昭和60年9月、昭和61年3月、8月)
研究資料 永福寺本遊行上人縁起絵(美術研究339、340、昭和60年9月)
永福寺蔵遊行上人縁起絵巻(古美術77、昭和61年1月)
妙法寺蔵妙法蓮華経金字宝塔曼荼羅について(美術研究337、昭和62年2月)
八幡大菩薩御縁起と八幡宮縁起 附載一、二(美術研究339、340、昭和62年3月、11月)
出相観音経の諸問題(実践女子大学美学美術史学4、平成1年3月)
源平合戦図屏風 海北友松筆(古美術92、平成1年10月)
十王経絵について(実践女子大学美学美術史学5、平成2年3月)
両界曼荼羅(古美術95、平成2年7月)
和字絵入往生要集について(国文学研究資料館文献資料部・調査研究報告12、平成3年3月)
十王経絵拾遺(実践女子大学美学美術史学7、平成4年3月)
十王地獄絵(実践女子大学美学美術史学8、平成5年3月)
博物館学と文化財(MUSEOLOGY12、平成5年4月)
単行図書掲載文献
類型より写実へ 鎌倉時代の肖像画(日本絵画館4、昭和45年3月、講談社)
肖像画(原色日本の美術23、昭和46年6月、小学館)
平治物語絵巻の絵画史的考察(新修日本絵巻物全集10、昭和50年11月、角川書店)
蒙古襲来繪詞について(新修日本絵巻物全集10)
「後三年合戦絵詞」について(日本絵巻大成15、昭和52年11月、中央公論社)
鎌倉時代肖像畫と似繪(新修日本絵巻物全集26、昭和53年9月、中央公論社)
中殿御會圖について(新修日本絵巻物全集26)
法華經繪巻について(新修日本絵巻物全集25、昭和54年6月、中央公論社)
在米の弘法大師伝絵巻について(原色日本の美術27在外美術 、昭和54年7月、中央公論社)
遊行上人縁起繪の成立と諸本をめぐって(新修日本絵巻物全集23、昭和54年9月、中央公論社)
中世絵画の誕生(日本美術全集10、昭和54年9月、学習研究社)
絵巻物(日本美術全集10)
大画面による説話画(日本美術全集10)
肖像画(日本美術全集10)
駒競行幸繪巻(新修日本絵巻物全集17、昭和55年1月、学習研究社)
小野雪見御行繪巻(新修日本絵巻物全集17)
なよ竹物語繪巻(新修日本絵巻物全集17)
宗俊本遊行上人縁起繪諸本略解(新修日本絵巻物全集23)
極楽再現(日本古寺美術全集15、昭和55年3月、集英社)
槻峯寺建立修行縁起について(新修日本絵巻物全集別巻1 、昭和55年11月、集英社)
八幡縁起繪巻(新修日本絵巻物全集別巻2、昭和56年2月、集英社)
天稚彦草子繪巻(新修日本絵巻物全集別巻2)
鼠草紙繪巻(新修日本絵巻物全集別巻2)
祖師像と祖師伝絵巻(日本古寺美術全集21、昭和57年5月、集英社)
妙心寺の肖像と頂相(日本古寺美術全集24、昭和57年9月、集英社)
浄土教の絵画(全集日本の古寺8、昭和59年8月、集英社)
高僧・祖師伝絵(全集日本の古寺4、昭和60年6月、集英社)
縁起絵について―中世の社寺縁起を中心に―(全集日本の古寺5 、昭和60年7月、集英社)
わが国の仏教説話絵(全集日本の古寺15、昭和60年5月、集英社)
単行図書
日本の美術56(昭和46年1月、至文堂)
日本の地獄絵(昭和48年10月、芳賀書店)
日本の美術33(昭和50年5月、小学館)
金字宝塔曼荼羅(昭和51年3月、吉川弘文館)
合戦絵巻(昭和52年11月、角川書店)
日本絵巻大成15(昭和52年11月、中央公論社)
日本の美術146(昭和53年7月、至文堂)
絵巻と物語(昭和57年11月、講談社)
日本の美術203(昭和58年4月、至文堂)
日本の美術271(昭和63年12月、至文堂)

出 典:『日本美術年鑑』平成7年版(339-341頁)
登録日:2014年04月14日
更新日:2015年12月14日 (更新履歴)
『日本美術年鑑』に収録されている以下の記事にも「宮次男」が含まれます。
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