北村大通

没年月日:1992/12/16
分野:, (工,漆)

 漆工芸家で国選定文化財保存技術保持者の北村大通は、12月16日心不全のため奈良県天理市の奈良東病院で死去した。享年82。漆工芸制作とともに、正倉院宝物の漆工品をはじめとする数々の文化財の修理で知られる北村大通は、明治43(1910)年3月19日奈良市に生まれた。本名久造。漆塗りで著名な吉岡家の家系にあり、幼児から父に技法の手ほどきを受け、奈良県立郡山中学校を経て東京美術学校漆工科に進み、昭和8年卒業した。その後、一時漆工から離れたが、兵役を機に漆工家に専念するに至った。同18年第6回新文展に「火焔獅子蒔絵箱」が初入選し、戦後も初期日展および日本伝統工芸展に制作発表を行った。同23年京都市立美術専門学校助教授に就任、翌年教授となったが同年中に依願退職した。同28年、奈良国立文化財研究所研究員を依嘱され、同年から同31年に至る第一次正倉院漆工品調査(第二次調査、同45-49年)に参加した。同32年、奈良県教育委員会の依嘱により、当麻曼荼羅厨子の修理施工に携わり、同38年には10年計画による正倉院漆工品の修理を開始し、同48年までの間、総点数233点の修理を行った。その後、数多くの文化財の修理並びに復元模型の制作に従事した。その主な修理品に、昭和38年四天王寺蔵重文「漆皮箱」、同41年手向山神社蔵重文「黒漆四枚居木鞍」、同44年春日大社蔵重文「亀甲蒔絵手箱」、同45-46年春日大社蔵国宝「黒漆平文根古志形鏡台」、同54年醍醐寺蔵重文「沃懸地螺鈿説相箱」、同57-58年東大寺蔵重文「朱塗布薩盥」、同60年東大寺蔵国宝「花鳥彩絵油色箱」などがあり、復元模型制作に正倉院宝物の「漆挟軾」「玉帯箱」、当麻寺の「曼荼羅厨子軒先板」、春日大社の「蒔絵筝」などがある。同50年、永年の功績に対して紫綬褒章が授与され、翌52年には国選定文化財保存技術者に認定された。また、同54年日本漆工協会により漆工功労者表彰を受けた。

出 典:『日本美術年鑑』平成5年版(329-330頁)
登録日:2014年04月14日
更新日:2015年12月14日 (更新履歴)
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