亀田孜

没年月日:1982/12/05
分野:, (学)

 東北大学名誉教授、文化財保護審議会専門委員の亀田孜は、12月5日急性心不全のため、旅行先の福島市飯坂町で死去、享年76。1906(明治39)年3月4日、吉野臥城(甫)の三男として宮城県角田市に生まれ、1922年亀田よねの養子となる。宮城県立第一中学校、第二高等学校理科甲類を経て、26年東北帝国大学法文学部に入学、29年同東洋芸術史学科を卒業、62年3月「白鳳後期美術の諸形相」により東北大学より文学博士の学位を授与される。職歴は29年東北大学助手、30年同副手となり、33年副手を解嘱、京都日之出新聞社学芸部嘱託となり『京都社寺名宝鑑』の編集に従事す。34年帝室博物館鑑査官補に任じ、奈良帝室博物館に勤務、44年帝室博物館鑑査官に昇任、以来50年東北大学助教授に補せられ、文学部東洋芸術史学科を担当するまで、奈良国立博物館に勤務。52年東北大学文学部教授に昇任。69年東北大学を退官、同大学名誉教授の称号を授与された。この間、53年に宮城県文化財調査委員、54年に岩手県文化財専門委員、61年に仙台市博物館協議会会長、66年に文化財専門審議会(文化財保護審議会)委員となり、また、38年~39年にベルリン開催の「日本古美術展覧会」のためドイツに出張、その功により40年、ドイツ国政府より「フェル・ディーンストクロイツ、ドリツテル・シュツーフェ・アードレル」勲章を授与され、55年には宮城学院女子大学講師(非常勤)となった。東北大学退官後も上記の委員や講師を続けるほか、70年~71年にプリンストン大学客員教授、72年に東北学院大学講師(非常勤)となり、学界・文化財行政に寄与し、76年11月、勲三等旭日中綬章を授与された。
 その専門は日本仏教美術史で、東北大学在学中より同大教授福井利吉郎の学風を受け、広い視野の研究態度をとり、作品の実証的研究には光学的研究法を採用して、より客観的正確に対象を鑑識することを行い、わが国大学での美術史教育でこの種の研究方法を講じた最初といえる。さらに、こうした作品の鑑識をもとにして、作品の現象面だけでなく、その製作背景、基層にある信仰、経典の解釈、造形精神、時代思想等々にまで論及したうえで美術史的解釈が行われる。その論著は別記の著作目録に示す通りである。

著作目録
1 著書
日本仏教美術史叙説 学芸書林 昭和45年4月
仏教説話絵の研究 東京美術 昭和54年2月
雪村 日本美術絵画全集8(集英社) 昭和55年12月
2論文
京都社寺名宝鑑・大徳寺篇・西本願寺篇 芸艸堂 昭和8年6・7月
日本肖像画図録解説 奈良博物館特別展図録 昭和10年4月
一乗寺天台高僧像私見 日本肖像画図録 昭和10年4月
太子勝鬘経御講讃図 文化 昭和10年11月
金剛峯寺仏涅槃図解説 東洋美術 昭和11年7月
法隆寺金堂の壁画について 星岡 昭和11年9月
公刊 本尊目六 美術研究 昭和11年10月
南都絵師の画蹟 宝雲 昭和12年8月
瑠璃寺不動明王像解説 東洋美術 昭和12年12月
藤原美術聚英解説 奈良博物館特別展図録 昭和13年2月
鞆淵八幡社の白描縁起 清閑 昭和13年10月
仁和寺蔵聖僧像解説 仏教図像複製刊行会 昭和15年5月
長谷能満院の春日浄土曼荼羅 国宝 昭和15年6月
平家納経図録 奈良博物館特別展図録 昭和15年6月
石山寺蔵倶力迦羅三童子像解説 仏教図像複製刊行会 昭和15年8月
理性院蔵祖師像解説 仏教図像複製刊行会 昭和15年12月
十二神将の巳神像 星岡 昭和16年1月
聖皇曼荼羅図説 日本上代文化の研究 昭和16年4月
平家納経雑俎 美術研究 昭和16年6月
園城寺不動明王八大童子画像 清閑 昭和16年7月
仁和寺蔵十二神将解説 仏教図像複製刊行会 昭和16年7月
法隆寺流記資材帳に見ゆる諸尊 文化 昭和17年6月
春日明神の垂迹形 上・下 国宝 昭和17年8・10月
奈良時代の弥勒浄土 古美術 昭和17年11月
公刊 南円堂御本尊以下御修理先例 美術研究 昭和18年1月
公刊 長谷寺焼失 美術研究 昭和18年1月
勧修寺の釈迦説法図繍帳 美術研究 昭和18年3月
船中湧現観音像をめぐりて 密教研究 昭和18年3月
矢田寺所見 清閑 昭和18年5月
行林抄のこと(事相書目研究の一) 国宝 昭和18年6月
大仏蓮辨の鐫刻画 古美術 昭和18年10月
九条兼実の春日社と南円堂信仰 国宝 昭和18年10月
東大寺華厳五十五ケ所絵小考 清閑 昭和18年11月
東征伝縁起幽考 唐招提寺論叢 昭和19年2月
信貴山縁起絵巻修理改装の記 文化 昭和19年9月
青不動画 名品手帖 昭和19年9月
園城寺黄不動抄 密教研究 昭和19年10月
弥勒菩薩図像集解説 鵤故郷舎 昭和21年6月
森川杜園 奈良博特別展解説 昭和21年9月
正倉院御物展観の栞 近畿日本鉄道 昭和21年10月
正倉院御物についての断想 三彩 昭和22年1月
麻布墨画菩薩と仁王会と 上・下 国華 昭和22年2・3月
京阪神家蔵古美術展覧会の仏画 日本美術工芸 昭和22年3月
上代美術に見る竹 日本美術工芸 昭和22年5月
大円院無量力吼、一乗寺善無畏、龍樹 国華百粋 昭和22年6・10月
図像としてみた薬師如来 日本美術工芸 昭和23年4月
奈良時代の絵画 博物館ニュース 昭和23年5月
広い研究分野 仏教芸術 昭和23年8月
奈良時代の祖師像と倶舎曼荼羅 仏教芸術 昭和23年8月
御物聖徳太子御影考 美術研究 昭和23年12月
壁画災前災後 仏教芸術 昭和24年3月
法隆寺の絵画 法隆寺図説 昭和24年4月
彩画にむかひて 日本美術工芸 昭和24年4月
金堂壁画と塔壁画 総観法隆寺 昭和24年10月
法華堂根本曼陀羅新論 仏教芸術 昭和25年2月
智光変相拾遺 付智光伝及び智光曼荼羅関係資料 東北大学文学部研究年報 昭和26年12月
神光院蔵紫紙金銀泥般若心経の見返し絵 大和文華 昭和27年6月
古代の絵画(飛鳥・奈良) 世界美術全集(平凡社) 昭和27年12月
正倉院御物中の密陀絵研究 古文化財之科学 昭和29年12月
法相祖師像としての慈恩大師画像 仏教芸術 昭和30年4月
平安時代の陸奥開拓と平泉の仏教美術文化 東北史の新研究(文理図書出版) 昭和30年8月
弥勒浄土像 文化 昭和31年3月
平家納経・扇面写経 書道全集(平凡社) 昭和31年4月
法華寺阿弥陀三尊画像の意想 上 大和文華 昭和31年6月
信貴山縁起虚実雑考 仏教芸術 昭和31年4月
正倉院絵画解説 正倉院(毎日新聞社) 昭和31年11月
東北の石仏 仏教芸術 昭和31年12月
寺院建築と東北文化、絵画工芸彫刻解説 岩手県の文化財 昭和31年12月
法華寺阿弥陀三尊画像の意想 下 大和文華 昭和32年2月
高蔵寺の仏像 宮城県文化財調査報告書 昭和33年3月
粉河寺縁起絵巻綜考 大和文華 昭和33年9月
興福寺の絵画と絵所絵師 仏教芸術 昭和34年9月
中尊寺の絵画 中尊寺(朝日新聞社) 昭和34年11月
華厳縁起について 日本絵巻物全集 昭和34年12月
飛鳥奈良時代絵画、平安前期絵画 日本美術全史 上 昭和34年12月
平安前期の美術、神秘とみやび 世界美術全集(角川書店) 昭和36年7月
橘在列賛の延暦寺東塔法華三昧堂の大師影像壁画 かがみ 昭和36年8月
薬師寺仏足石と仏跡図本の論考 仏教芸術 昭和37年12月
東征伝絵巻について 日本絵巻物全集 昭和39年4月
仏跡の伝来と観智院の仏足図 仏教芸術 昭和39年8月
中尊寺供養願文雑事 日本文化研究所研究報告 昭和40年3月
吉祥天像と上代の金光明経の美術 薬師寺(近畿日本叢書5) 昭和40年6月
周継雪村の瀟湘八景図 日本文化研究所研究報告 昭和41年3月
法隆寺金堂の壁画 法隆寺壁画と金堂(朝日新聞社) 昭和43年9月
経絵について 大和文華 昭和44年4月
絵因果経からみた仏伝の美術 日本絵巻物全集(角川書店) 昭和44年4月
チベット造形資料によるX線調査報告 文化 昭和44年9月
推古朝の美術 文化 昭和44年9月
法華経見返絵と中尊寺経絵 仏教芸術 昭和44年10月
仏教美術の開化と画工の活躍 日本絵画館1原始・飛鳥(講談社) 昭和45年5月
中宮寺天寿国繍帳 日本絵画館1原始・飛鳥(講談社) 昭和45年5月
玉虫厨子と橘夫人厨子 日本絵画館1原始・飛鳥(講談社) 昭和45年5月
法隆寺金堂壁画 日本絵画館1原始・飛鳥(講談社) 昭和45年5月
法隆寺金堂釈迦三尊像の台座絵と金堂の天蓋 日本絵画館1原始・飛鳥(講談社) 昭和45年5月
東北古美術雑話 日本文化研究所研究報告別巻7 昭和45年7月
肖像画概説 原色日本の美術23「面と肖像」(小学館) 昭和46年6月
東北地方の仏像彫刻概観-平安初期・中期- 仏教芸術85 昭和47年4月
東北の仏教彫刻 家庭と電気(東北電力) 昭和47年8月
ボストン美術館所蔵新羅明神と脇侍とする弥勒如来像 仏教芸術90 昭和48年2月
厳島願経と平清盛 古美術45 昭和49年8月
平家納経の絵と今様の歌 仏教美術100 昭和50年2月
仏涅槃図 日本の仏画(学習研究社) 昭和51年7月
吉祥天像・倶舎曼陀羅 日本の仏画(学習研究社) 昭和53年1月
法隆寺の法華経関係の美術 仏教芸術132 昭和55年9月
信貴山縁起絵巻 『やっとはたち』(フジヤ画廊20周年記念誌) 昭和57年10月

出 典:『日本美術年鑑』昭和58年版(286-288頁)
登録日:2014年04月14日
更新日:2015年12月14日 (更新履歴)
『日本美術年鑑』に収録されている以下の記事にも「亀田孜」が含まれます。
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