鴨居玲

没年月日:1985/09/07
分野:, (洋)

元二紀会委員の洋画家鴨居玲は9月7日午前4時半頃自宅で死去した。享年57。持病の狭心症によるものと見られる。孤独な人間を卓抜な描写力で描いた鴨居玲は、昭和3年2月3日長崎県平戸に生まれた。姉はデザイナーの鴨居羊子。新聞記者であった父の赴任に伴って、韓国京城で小学校卒業、金沢の旧制中学を経て、同地に疎開中であった宮本三郎に師事。同23年金沢美術工芸大学洋画科在学中に、第2回二紀会「青いリボン」で初入選し、翌年同大を卒業。同年第3回二紀会で褒賞を受け同会同人に推される。同29年第8回同展に「空気の層」「あるく」を出品して同人努力賞受賞。同34年渡仏。同36年パリのジュヌ・パントゥールに入選して帰国する。同40年ブラジルへ渡り、のち渡欧。翌41年イタリアより帰国。同43年二紀会会員に推挙される。翌44年「静止した刻」で第12回安井賞受賞、同年昭和会優秀賞受賞、翌年より52年までスペイン、フランスに滞在。この間の同48年第27回二紀展で文部大臣賞を受けるが、同56年会員でありながら長く出品していなかつた同会を退く。同59年在住地である兵庫県より兵庫県文化賞受賞。素描集『酔って候』を54年刊行し、『鴨居玲画集夢候 作品1947-1984』が60年7月に刊行されて間もなくの急逝であった。酔っぱらい、廃兵、流し、老婆など人生の悲哀を滲ませるモチーフを、褐色や暗い青緑色などの染み入るような色彩と洗練されたタッチで描き、長い滞欧中に培った確かな素描力にはスペインの画家ゴヤ、ベラスケスらの影響が指摘されていた。
二紀展出品歴 第2回(昭和23年)「青いリボン」、4回「赤い裸婦」、5回「夜」「夜の風景」、6回「三人」「二人」、7回「不安」、8回「空気の層」「あるく」、9回(同30年)「順を待つ」、10回「時計」「コワレタ時計」、11回「喜劇日本(B)」「喜劇日本(C)」、12回「腕時計」「食事時」「夜の海」「昼寝」、13回「ひるね」「象使い」「月と魚」「鳥」、14~19回(同35~40年)出品せず、23回「サイコロ(A)」「サイコロ(B)」、24回(同45年)「ドアはノックされた(アンネの日記より)」、25~30回(同46~51年)出品せず、31回「ダイス(A)」「ダイス(B)」、32回「教会(A)」「教会(B)」、以後出品せず。

出 典:『日本美術年鑑』昭和61年版(256-257頁)
登録日:2014年04月14日
更新日:2023年09月13日 (更新履歴)

引用の際は、クレジットを明記ください。
例)「鴨居玲」『日本美術年鑑』昭和61年版(256-257頁)
例)「鴨居玲 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/10086.html(閲覧日 2024-03-28)

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