渡瀬凌雲

没年月日:1980/05/17
分野:, (日)

日本画家で日本南画院副理事長の渡瀬凌雲は、5月17日午後7時20分脳イッ血のため、京都市東山区の京都第一日赤病院で死去した。享年75。1904年7月9日長野県下伊那郡に生まれ、本名幸成。6歳の時に大平小洲に南画の手ほどきを受け、10歳で山本梅荘に師事、根羽尋常小学校高等科を卒業後上京し、福田浩湖塾に入門した。錦城中学・正則英語学校に通いながら那智左典に漢学を学び、25年には京都の福田静処翁に和漢文学・詩書を学ぶ。30年菁莪会研究所に入り、33年第14回帝展に「河口」が初入選したが、以後は日本南画院を中心に出品する。37年京都市美術展「南紀佐野村」で京都市長賞を受賞、39年中国へ写生旅行している。46年同志と南画院(日本南画院は40年大東南宗院となる)を結成し、同展や日本南画壇展に出品を続けた。58年から59年にかけてアメリカを写生旅行しながら各地で個展を開催、帰国後の60年、社団法人日本南画院を結成し理事に就任した。62年「残照グランド・キャニオン」が桂月賞を受賞し、常務理事、審査員となり、73年から副理事長をつとめていた。主な作品は、上記のほか「新秋」(36年)「雲龍図」(天龍寺山内慈済院開山堂天井画、59年)「吉野熊野山海図巻」(79年)など。

略年譜
1904 7月 9日、長野県下伊那郡に生まれる。
1910 大平小洲(渡辺小華門)に南畫の指教を受け、雅号を凌雲とする。
1914 山本梅莊の門に入る。
1919 根羽尋常高等小学校卒業、東京に出て福田浩湖塾に入る。
漢学を那智左典氏に学び、錦城中学校及び正則英語学校に通う。
1920 日本南宗畫會に「松籟泉韻」を出品。
1925 京都の古道人福田静処翁に和漢文学、詩書を学ぶ。
1930 菁我会研究所に入る。
1932 日本南畫院に「暮」出品。
1933 帝国美術院「河口」初入選、日本南畫院「漁磯」出品。
1934 日本南畫院「古座峡」出品。大禮記念、京都市美術館記念展に「宿雨收」招待出品。
1935 帝国美術院「那智瀑」、日本南畫院「鬼橋」、京都市美術展「秋渉」出品。
1936 文展「新秋」。
1937 京都市美術展「南紀佐野村」京都市長賞。
東北地方、北海道写生旅行。
1938 日本新興南畫院同人として「南紀鹿島」出品(此年より文展不出品)。
1939 中国を写生旅行。
1940 日本南畫院解編大東南宗院となる。
1945年迄戦時美術展等出品。
1943 朱陽會を組織。
1946 京都市展「新宮河口」出品。
同志と南畫院結成、東京都美術館に第1回展開催「磨崖」出品。
1947 第2回南畫院展を東京、京都に開催「那智春望」出品。
1948 第3回南畫院展「三尾秋色」出品。
1949 現代美術展「滴翠」、第4回南畫院展「日吉三橋」出品。
1950 シカゴ美術館東洋部に水墨作品3点納入。
1951 第6回南畫院展「鷹ケ峯夜雪」出品。
1953 第9回日展に「秋立つ春日野」出品。
1954 第8回南畫院展「春日神苑」出品。
1955 第9回南畫院展「越中五箇山風景」出品。
1956 南畫院創立10周年記念展「寒巌夕照」出品。
1957 第3回日本南畫壇展「湖國」出品。
1958 第4回日本南畫壇展「曹源池」「龍頭溪」出品。
11月渡米、ロスアンゼルス市にて個人展を開催。
1959 米国各地で個展開催、9月帰国。
天龍寺山内慈済院開山堂天井に「雲龍図」を画く。
1960 第6回日本南畫壇展「ナイアガラ瀑布」出品。
社団法人日本南畫院結成、理事に就任。
1961 第1回日本南畫院展「瀞峡」奨励賞。
1962 第2回日本南畫院展「残照グランド・キャニオン」桂月賞。常務理事、審査員に就任。
第1回国際墨画展「晃山雨霽」出品。
1963 第3回日本南畫院展「那智瀑底」。
戸隠、妙義山、黒姫山等写生旅行。
1964 第4回日本南畫院展「妙義晩照」。
1965 第5回日本南畫院展「春林」。
東北、關東、伊勢等写生旅行。
1966 第6回日本南畫院展「飛瀑朝宗」(文部大臣賞)「雲煙戸隠」。
雲林社を主宰。
1967 南林社を結成。
第7回日本南畫院展「潮岬」。
1968 第8回日本南畫院展「宿雨收」、併催の日本水墨画展を第二部と改称し、本展を第一部とする。
九州写生旅行。
1969 第9回日本南畫院展「普陀洛迦」。
金沢、白山方面写生旅行。
1970 第10回日本南畫院展「古都春雪」。
岡山等写生旅行。
1971 第11回日本南畫院展「豪溪春深」。
四国写生旅行。
1972 第12回日本南畫院展「吉野」。
1973 第13回日本南畫院展「大台ケ原」 副理事長、審査員に就任。
和歌山県文化功労賞を受賞。
北陸を写生旅行。
1974 第14回日本南畫院展「フォロ・ロマーノ(羅馬遺跡)」。
山陰を写生旅行。
1975 第15回日本南畫院展「仙境熊野」。
1976 第16回日本南畫院展「雪原(ミシシッピー源流)」。
木曾川方面写生旅行。
1977 第17回日本南畫院展「楓林朝陽」。
欧州写生旅行。
1978 第18回日本南畫院展「晨映」。
1979 第19回日本南畫院展「吉野熊野山海図巻 其一」。
養命寺に障壁画「牡丹と唐獅子」を寄進。
中國写生旅行。
1980 第20回日本南畫院展「黄山玉屏峰」。
5月17日永眠。
第14回南林社展に「唐陶一彩」を出品。
(渡瀬道子編略年譜参照)

出 典:『日本美術年鑑』昭和56年版(251-253頁)
登録日:2014年04月14日
更新日:2023年09月13日 (更新履歴)

引用の際は、クレジットを明記ください。
例)「渡瀬凌雲」『日本美術年鑑』昭和56年版(251-253頁)
例)「渡瀬凌雲 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/10018.html(閲覧日 2024-04-24)

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