【1892.12.10】

十二月十日 土

 朝仕事部屋ニ十時頃ニ行く 部屋の中の道具の置き直しヲ爲る ひるめし後直ニ家主と暖爐(オレの寝部屋の方ニ在るノ)ヲ取りニ行て仕事部屋の中ニすへ付ケ方ヲ爲ス 二時過ニすつかり仕舞た 今迄の暖爐丈ぢや充分ニ暖くないから今一つすへさしたのだ 夕方暗く爲る迄菊の花及瓶ヲかく 明ヲつけて火ニあたり乍らとろとろとして居る處ニ和郎が來た 白耳義の$キプス$と云人からこう云手紙が來たと云て讀み立てる それニついて又色々辯ニ任せて演説ニ及ぶ 出がけニ家賃の拂ヲ爲ス(十二月分) 和郎夕めし時迄來て居て話す 夜食後も同斷 アンベルスニ居るトルソウトと云僧さんで奴の雇れ口をさがし方ヲ引受てる奴ニやる手紙ヲ書いてる オレハ又かぶの煮方ヲす 畫部屋から歸て來て直ニ壽が書物借リニ來た 奴ヲとつかまへて和郎が自轉車ノ事だの歩き方の早い事だの得意ニ爲て説いたニハ壽も一本致された様子 めしヲ美陽家ニ取リニ行く 食後和郎が來る前ニも亦美陽家ニ行キ札ヲ小錢ニ替へて呉れと札ヲ置て頼で來た


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