【1892.12.03】

十二月三日 土 曇

 朝十時頃ニ畫部屋ニ行たが和郎の目懸ニ付ての心配の話を承り勉強不出來 晝後ハ霜菜ヲ手本として描た 畫部屋ニ來る前ニ鞠の處ニ立寄り奴の胸のあたりから腕など見たがなかなかかけるわい 御酒の御馳走ニなる 和郎も畫部屋ニ來て書キ物す 家主のジユル爺が薪ヲ畫部屋の中ニ積み込で呉れた 和郎と畫部屋から歸る時宿屋の前で$サンマルセル$のぢい夫婦ニ出逢ふ 是非酒ヲのもうとの事 一度内へ歸て宿屋ニ出懸て行く 七時頃迄居る
 今夜鶏ヲ霜菜が煮て呉れたのでそれヲ取りニ美陽家ニ行く 食後もちよいと出懸て行て豚の脂肉切りの手傳ヲやらかす 九時頃和郎が來た 奴ハ目懸ニやる手紙ヲかく オレハ簔田へやる手紙ヲかく 今朝川村よりの端書ヲ受取 昨日の晝後の便で美陽家ニ着た様子也


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