【1892.11.30】

十一月三十日 水

 晝迄ハ日がてつたりして中々いゝ天氣だつたが晝後ハ雨が降た 夕方ニハ上り夜ハ晴れていゝ月夜だつた 朝川向フヲ少シク散歩ス 今日も亦庭での畫ハだめ とうとう三條様から貰た菊の花ヲ描く事として畫部屋ニ行ク 花いけニする大キナ壺ヲもとの烟草屋の婆ニ霜菜が借りて呉れた 霜菜ヲ菊のかげニ置キ下畫ヲかく 畫ヲ始むる前ニ鞠 霜菜と三人でおみきを頂く 鞠が猪口ヲ持て來て呉れた 酒ハいつか鞠の處ニ持て行てたゝき出された酒也 夕方から和郎が手紙かきニ來タ 夜話ニ夜食後ちよいと美陽家ニ行く 八時半前ニ歸る 和郎が九時頃ニ來て十時過迄居る(中略)
 晝後の便で島からの畫入の手紙ヲ受取る 夜ハ其返事ヲかく 今夜ハ部屋ニ火ヲたいた


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