【1892.11.24】

十一月二十四日 木

 今朝十時頃ニ鞠の處ニ行うとして見たら雨が降り上るのでやめて畫部屋ニ這入込み布の張り直し方などやらかす 晝後も霧が降る様で變ナ天氣だから手本を外ニすゑて描く事ハとてもだめさ 色々工夫の末畫部屋で仕事する事とした 家主が火ナドたきつけて呉れたから大きニ仕合せ 霜菜ヲ手本トシテ二時半頃から夕方迄めつしり稽古す 夜九時少し過迄美陽方で遊ビ(夜食前古巣夫妻がオレの内の前を通りかゝたのニ出つこあしたから一寸いと内を見せてやつた)後宿屋ニ行た $サンマルセル$の親爺が來て居た しばらくつまらねへ話を聞て居た $ブツフアール$ $コリンス$ 和郎と$サンマルセル$親爺を墓場の上迄送て行た 今夜ハ少しあたゝか也 全體今日ハ二三日前ニ比ぶれハぬくい方也 十一時十五分前頃ニ内ヘ歸る 夕めし前ニ懸て置た湯がまだかなりあつくして居たので昨日の洗ヒのこしの皿を洗て仕舞た さつきめし前ニ和郎が來て奴の未來の壺が$シヤトダン$とか云處ニ十五日程遊ニ行くと云てよこしたので其處ニ逢ヒに行かんとするの甘い策ヲ思ヒ付いタ様ナ事を云て聞かす オレハ感服せぬと云てやつた 何ニしろ壺の方でハ和郎があんなニほれてるから夫婦ニ爲ろうのなんのかんのと云てるので極内心の處ハ只和郎を可愛そうだと思てる丈の事らしく思ハれていけネへ まあなんでもいゝ 壺ニして見たら安心するだろう 面倒臭へ 早くはめるがいゝや


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