活動報告  2010年3月 
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東京文化財研究所
 3月施設訪問

 中国陝西省歴史博物館及び東アジア文化遺産会議参加者16名
 3月3日に、中国陝西省歴史博物館研究員が当研究所の事業視察のため来訪、それに併せ当研究所で開催した東アジア文化遺産会議参加者とともに、4階保存修復科学センター化学実験室及び生物実験室、地階無形文化遺産部実演記録室、3階保存修復科学センター修復アトリエ、4階文化遺産国際協力センター資料閲覧室を見学し、それぞれの担当者が説明及び質疑応答を行いました。

 インドネシア・ボロブドゥール遺産保存研究所技官およびタイ芸術局保存研究部門技官2名
 3月8日に、文化遺産国際協力センターとの間で行っている共同研究の一環として、インドネシア・ボロブドゥール遺産保存研究所およびタイ芸術局保存研究部門の技官が視察のため来訪、3階保存修復科学センター修復アトリエ、2階企画情報部資料閲覧室、地階保存修復科学センターX線撮影室、無形文化遺産部実演記録室を見学し、それぞれの担当者が説明及び質疑応答を行いました。

(研究支援推進部・崎部剛)
 
企画情報部
 村松画廊資料受贈と感謝状贈呈

 1960年代以降、我国の現代美術を牽引する作家たちの作品発表の場となった村松画廊の画廊主、川島良子氏は、2009年12月に閉郎するにあたり、展覧会記録写真を納めたアルバム等の資料を、当研究所にご寄贈くださいました。同画廊は、1913年に銀座に開店した村松時計店の画廊として1942年頃に始まり、1968年に川島氏に引き継がれました。その後、40年に及ぶ画廊活動の資料は、戦前から当所が収集、整理、公開してきた現代美術作家資料を補う貴重なものです。その篤志に対し当所では感謝状をお贈りすることとし、3月12日に所長より贈呈しました。受贈資料は、末永く保存し、活用・公開していく所存です。

(企画情報部・山梨絵美子)
川島良子氏に感謝状を贈呈する鈴木所長

 『平等院鳳凰堂仏後壁調査資料目録―近赤外線画像編』の刊行

 平等院では、平成15年から20年までの間、鳳凰堂の平成大修理が行われ、阿弥陀如来坐像、および、その光背・台座等を境内の特設工房に遷されました。これを機に、平成16・17年に平等院のご理解とご協力のもとに、仏後壁前面画の詳細な光学調査を実施し、高精細デジタル撮影技術を駆使して詳細に壁画の現状を記録することができました。その成果報告として2月26日に『平等院鳳凰堂仏後壁調査資料目録―近赤外線画像編』を刊行いたしました。本書は昨年度刊行の『平等院鳳凰堂仏後壁調査資料目録―カラー画像編』に続くものです。周知の通り、平等院鳳凰堂の仏後壁前面に描かれた板絵は、普段、本尊・阿弥陀如来像の背後に位置するため、画面の全貌を詳細に把握することは容易なことではありません。本書はこれからの平等院鳳凰堂仏後壁前面画の研究のとどまらず、広く平安仏画の研究に大いに活用されることになるものと思われます。なお、来年度は『平等院鳳凰堂仏後壁調査資料目録―蛍光線画像編』の刊行を予定しています。

(企画情報部・津田徹英)
 

 『“オリジナル”の行方―文化財を伝えるために』の刊行

 昨年度に東京文化財研究所は、第32回文化財の保存及び修復に関する国際研究集会「“オリジナル”の行方―文化財アーカイブ構築のために」を開催しましたが、まる一年の編集期間を経て、このたび、その報告書を刊行する運びとなりました。国内外の25名の研究者による発表と討論を収録した同書は、日本・東洋の美術を中心に西洋の美学や現代美術、無形文化財をも視野に入れ、“オリジナル”の姿を志向しつつ、いかに文化財を伝えるべきかを探る内容となっています。発表の各タイトルについては、企画情報部刊行物のページをご覧ください。
http://www.tobunken.go.jp/~joho/japanese/publication/
book/report_sympo32th.html

 有名な北斎の《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》を左右反転させた表紙の作品は、同研究集会のPRイメージにも使わせていただいた現代美術家、福田美蘭氏によるものです。同書は『“オリジナル”の行方―文化財を伝えるために』のタイトルで、平凡社より市販されています。
http://www.heibonsha.co.jp/catalogue/exec/
frame.cgi?page=newbooks.html

(企画情報部・塩谷純)
『“オリジナル”の行方―文化財を伝えるために』表紙

 『春日権現験記絵披見台 共同研究調査報告書』の刊行

 東京文化財研究所企画情報部では、研究プロジェクト〈高精細デジタル画像の応用に関する調査研究〉の一環として、奈良国立博物館との共同研究を実施しています。平成22年3月には、「春日権現験記絵披見台」(奈良・春日大社蔵)の報告書を刊行いたしました。本作品は、縦約42㎝の6枚折りの屏風装の画面に、金銀の泥、切箔を用いて、春日大社の境内の情景が描かれています。この作品はかねてより紙本屏風の古例と見なされることや、14世紀の金銀泥絵の貴重な遺例としても、注目されていました。今回の共同研究調査で撮影した蛍光画像では、肉眼では確認しづらい図様や細部の表現を認識でき、今後の景物画、金銀泥絵研究において、重要な研究資料となることが期待されます。また報告書刊行に先立ち、2009年12月8日~2010年1月17日に奈良国立博物館で開催された特別陳列「おん祭と春日信仰の美術」において、本作品が出陳されるのにあわせて、この調査で撮影したカラー画像と蛍光画像をパネルとして対比的に展示し、一部成果公表を行いました。

(企画情報部・江村知子)
『春日権現験記絵披見台 共同研究調査報告書』表紙

特別陳列「おん祭と春日信仰の美術」において、「春日権現験記絵披見台」の前で解説を行う奈良国立博物館研究員・清水健氏

 物故記事の公開

 当研究所の刊行物『日本美術年鑑』(年刊)では、当該年に亡くなられた美術家及び美術関係者の方々についてまとめた記事を、物故者の欄に掲載しています。このたび、創刊号の『日本美術年鑑 昭和11年版』から『日本美術年鑑 平成6年版』までの51冊に掲載した物故記事2,104件を再編集し、ホームページの出版&デジタルアーカイブのコーナーで公開を始めました。記事ではその人物の生没年をはじめとして、略歴、著作目録などを紹介しております。現在1935年から1973年までの物故記事がご覧いただけますが、1974年以降の物故記事についても順次公開の予定です。なおホームページの研究資料検索システムのコーナーの美術家・美術関係者資料データベースで人名を検索していただきますと物故日が確認できますので、あわせてご利用ください。

(企画情報部・中村節子)
 

無形文化遺産部
 無形文化遺産国際研究会「アジア太平洋諸国における保護措置の現状と課題」報告書の刊行

 無形文化遺産部では1月14日に当研究所セミナー室にて、「アジア太平洋諸国における保護措置の現状と課題」と題して、国内外の11人の専門家を交えてシンポジウムを行いました。その報告書をこのほど刊行しました。PDF版は以下のリンクでご覧になれます。
http://www.tobunken.go.jp/~geino/ISSICH/IS2010.html

(無形文化遺産部・飯島満)
 

保存修復科学センター
 『保存科学』49号 発刊

 東京文化財研究所保存修復科学センター・文化遺産国際協力センターの研究紀要『保存科学』の最新号が、平成22年3月31日付けで刊行されました。高松塚古墳・キトラ古墳の保存に関する研究情報、その他保存科学に関する基礎研究や調査結果など、当所で実施している各種プロジェクトの最新の研究成果が発表・報告されています。ホームページから全文(PDF版)をお読みいただけますので、ぜひご利用ください。(http://www.tobunken.go.jp/
~hozon/pdf/49/MOKUZI49.html

(保存修復科学センター・犬塚将英)
『保存科学』49号

 2009年度日韓共同研究報告会の開催

 保存修復科学センターは、大韓民国・国立文化財研究所保存科学研究室と「文化財における環境汚染の影響と修復技術の開発研究」を進めております。共同研究では、相互の研究サイトで共同調査を行うとともに、年1回の研究会を持ち回りで開催し、意見交換を行っております。
 今年度の研究会は、平成22年3月18日、東京文化財研究所地階会議室で開催しました。韓国から国立文化財研究所および公州大学校の研究者にご参加頂き、日本および韓国の研究者による発表および議論を行いました。研究発表は主に石造文化財の保存修復に関するものでしたが、今回は日韓の研究者による共同発表の成果が目立つようになり、より緊密な関係が築けるようになってまいりました。
 今後もこのような形での研究交流を進めてゆき、両国の文化財保存修復の発展に尽くしてゆきたいと考えております。

(保存修復科学センター・森井順之)
臼杵磨崖仏周辺岩盤の樹脂耐候性試験

文化遺産国際協力センター
 アジア文化遺産国際会議:東アジア地域の文化遺産―文化遺産保護国際協力活動を通じて我々は何を発見し共有しうるか―

 「東アジア地域の文化遺産―文化遺産保護国際協力活動を通じて我々は何を発見し共有しうるか―」と題して、2010年3月4日-6日、東京文化財研究所を会場としてアジア文化遺産国際会議を開催しました。中国文化遺産研究院、韓国国立文化財研究所、中国敦煌研究院、ユネスコ北京オフィス、ユネスコ・アジア太平洋地区トレーニング研究センター、奈良文化財研究所、東京文化財研究から延べ63名の文化遺産保護の専門家が集まり、国際協力による文化遺産保護活動の現状と将来について話し合いました。研究機関はどのような国際協力を行っていくことができるのか。各研究所で実施されてきた共同研究と事業、相互の人材育成、文化遺産のドキュメンテーションの標準化など、多岐に渡る経験と情報を共有できました。このような場において20時間以上の密な意見交換がくりひろげられることは初めてで、各研究所間の関係を深めることができました。さらには、今後のプロジェクト立案と具体的な成果へつなげるスタートを切ったといえましょう。

(文化遺産国際協力センター・秋枝ユミイザベル)
討論の様子

参加者記念撮影

 タジキスタンにおける壁画断片の保存修復と人材育成(第7次ミッション)

 平成22年2月27日から3月10日まで、文化庁委託文化遺産国際協力拠点交流事業の一環として「タジキスタン国立古代博物館が所蔵する壁画断片の保存修復」の第7次ミッションを実施しました。本事業の目的は、タジキスタンにおいて壁画断片の保存修復作業を行う専門家を育成することにあります。
 第7次ミッションでは、壁画断片の欠損部分を充填材で埋める作業を日本人専門家の指導のもとで行いました。タジキスタン北部のカライ・カフカハI遺跡から出土した壁画断片は、火災による被害を受け、表面や下塗り層の色味が断片によって異なります。そのため、断片全体の色味を観察したうえで、充填材の色味を断片ごとに決定しなければなりません。研修生は、繰り返しサンプルを作成し、次第に適切な色味と堅さの充填材を作る感覚をつかんできたようです。
 来年度は、壁画断片を新しい支持体に設置する作業(マウント)について研修を行っていく予定です。

(文化遺産国際協力センター・影山悦子)
処置前

研修生による処置後(クリーニング、充填)

 モンゴルでの拠点交流事業に関する協議・情報交換

 東京文化財研究所は文化遺産国際協力拠点交流事業として、関係機関および専門家との連携、文化遺産国際協力コンソーシアムの協力により、モンゴルで木造建造物の修理、石碑・岩画の保存に関する研修を行っています。3月16日~18日、相手先であるウランバートルの教育・文化・科学省文化芸術局とモンゴル文化遺産センターで、昨夏に行った研修と関連調査の成果報告、次年度の活動方針について協議しました。成果に対するモンゴル側の満足は大きく、また今後の活動内容の具体的な提案から、期待の高さを実感しました。また、関連調査として、モンゴル・ユネスコ国内委員会委員長と面会、一覧表に登録済みの文化遺産の保護の方針や、今後登録を申請する文化遺産など、世界遺産に関する取り組みについて伺いました。木造建造物修理研修を行っているアマルバヤスガラント寺院は世界遺産暫定一覧表に登録されており、今後の展開が期待されます。

(文化遺産国際協力センター・二神葉子)
モンゴル・ユネスコ国内委員会関係者および文化遺産センター長との情報交換

 第8回バーミヤーン遺跡保護専門家会議への出席

 アフガニスタンの、バーミヤーン大仏が破壊されて7年が経ちます。国際社会はアフガニスタンの安定と発展を願いつつ、破壊されたアフガニスタンの文化遺産保護に尽力しています。東文研は当初から保存指針や計画の策定にかかわり、プロジェクトの中心的な役割を果たしています。3月25日、26日にユネスコをはじめとする国際機関、関係各国の専門家・研究機関等による第8回バーミヤーン遺跡保護専門家会議が、ドイツのミュンヘンで開催されました。
 アフガニスタンは現在でも治安が安定せず、継続的な保存修復等の活動が難しい状況にあります。こうした中で国際社会は何ができるのか、遺跡や破壊された大仏をどのように活用していくのか、という問題が熱心に議論されました。日本はユネスコ文化遺産保存日本信託基金のドナー国として大きな存在感を示しました。 会議を通じて、文化遺産保護の国際協力が今後のアフガニスタンの安定につながっていくことを心から願わずにはいられませんでした。

(文化遺産国際協力センター・原本知実)
出席者記念撮影

会議風景
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