ブックタイトル「鉄構造物の保存と修復」日本語版

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概要

「鉄構造物の保存と修復」日本語版

これらのアドバイスを参考に、航空自衛隊入間基地で保存処置が実施された。脱塩処置についてはエンジンを漬け込むことのできる水槽の手配ができずに見送られたが、エンジンに付着した異物は、竹へらなどを使って丁寧に取り除かれた。また鉄には、タンニン酸に替わり防錆用の油が塗布された(写真21、22)。2.4.陸軍三式戦闘機「飛燕」二型6117号機(1)来歴昭和19年(1944)に製造された6117号機は、敗戦時には現在の米軍横田基地となる陸軍福生飛行場に配備されていた。戦後、米軍に接収され、昭和28年(1953)に日本航空協会に無償譲渡されるまで、同地で屋外展示されていた。その後昭和61年(1986)に知覧特攻平和会館で屋内展示されるまで日本各地の施設などで展示保管され、この期間に複数回修復が実施された。29年間におよんだ知覧特攻平和会館での展示の後、平成27年(2015)9月から1年をかけて川崎重工業岐阜工場で修復が行われた。平成30年(2018)3月からはリニューアルオープンした岐阜かかみがはら航空宇宙博物館で展示されている(写真23)。(2)金属部品の腐食状況平成27年(2015)9月から1年をかけて川崎重工業岐阜工場で修復が行われた際に、基本構造に深刻な腐食がないことが確認されたが、主翼両翼端内部のアルミニウム合金のリブ(写真24)、および第1風防の正面中央に組み込まれた風防ガラスを機体内側から押さえるためのアルミニウム合金の部品(写真25)に著しい腐食が見つかった。写真24右主翼端内部の腐食状況(2017年1月、中村泰三撮影)写真25第1風防の正面中央に組み込まれた風防ガラスを、機体内側から押さえるためのアルミニウム合金の枠。上部矢印の周辺には、アルミニウム合金の腐食にみられる層状の剥離が発生している。また下部矢印の周辺は、腐食が進み、部品の一部が失われている。(2015年9月、苅田重賀撮影)写真26矢印箇所が張り替えられた外板(2017年11月撮影)写真27上部エンジンパネルに設けられた機関砲発射孔の鉄製パネルに発生した赤錆(2016年11月撮影)写真28鉄製の排気管カバーに発生した赤錆(2016年11月撮影)65