ブックタイトル未来につなぐ人類の技17 煉瓦造建造物の保存と修復

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概要

未来につなぐ人類の技17 煉瓦造建造物の保存と修復

5.4.現状保存:劣化した壁面の保存名称:旧山根製錬所煙突建設年:明治21年(1888)構造形式:煉瓦造(煙道内をRC造で補強)高さ20.145m所在地:愛媛県新居浜市角野新田町3-2822-1所有者:新居浜市指定・登録(指定・登録年月日):登録有形文化財(2009.08.25)工事期間:平成21年度?平成22年度写真5-12塩類劣化した壁面の現状保存写真5-13耐震補強工事前に補修された目地と煉瓦の劣化状況?補修の経緯この煙突は、山の頂上付近に建設されており、鉱業の繁栄を今に伝えるランドマークとして住民にも親しまれている。保存修理方法を検討する中で、時の経過を示す風化した姿の価値について、住民と市の間でコンセンサスが得られ、最終的に煙突を現状に近い状態で保存された(写註真5-12、5-13、5-14)30。写真5-14煉瓦煙突全景?工法の説明煉瓦壁面全体に塩類劣化が見られ、煉瓦、目地ともに粉状化し、抜け落ちた状態になっている箇所が多数あり、崩落の危険性もあった。そのため、煙道内部に鉄筋コンクリートを打設すると共に(写真5-15)、煉瓦壁面にステンレスピンを挿入し、全体の構造的一体性を高めている。ステンレスピン挿入において、壁厚の違いに応じて異なるピンが用いられた。地上から7mまでの高さを下段とし、750mmのピンを660本、地上7mから11mまでの高さを中段とし、650mmのピンを288本、地上11mmから18.775mまでの高さを上段とし、550mmのピン300本の計1,248本を挿入した(図5-6)。現在、目視確認できる下段部分では、4段おきにステンレスピンを挿入しており、劣化や破損の状態に合わせて挿入位置を調整していることがわかる(写真5-16)。もっとも傷みが激しかった煙突頂部(写真5-17)は、煙突上部装飾積註みを含め、積み直しを行っている31。95