ブックタイトル未来につなぐ人類の技17 煉瓦造建造物の保存と修復

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概要

未来につなぐ人類の技17 煉瓦造建造物の保存と修復

名称:東京駅丸の内駅舎建設年:大正3年(1914)構造形式:鉄骨煉瓦造、二階建、一部三階、スレート葺建築面積7,821.39m2所在地:東京都千代田区丸の内一丁目1番3号所有者:東日本旅客鉄道株式会社指定・登録(指定・登録年月日):重要文化財(2003.05.030)工事期間平成19年度?平成24年度?補修の経緯東京駅の外壁は、主に化粧煉瓦、花崗岩、擬石の3種類の材料によって構成されており、壁面を占める割合は化粧煉瓦が最も高い。煉瓦壁面には、ひび割れ等が認められるため、事前に打音調査が行われ、保存、補修方法について検討された。註化粧煉瓦の状態は、9段階に区分され(表5-1)24、ひび割れ補修も5つの注入方法が検討されていたが(表5-2)、最終的に化粧煉瓦に対する注入補修は行われず、註撤去または在置のいずれかが選択された25。?工法の説明化粧煉瓦の張り替えを最小限にするため、ひび割れの範囲に合わせて既存の化粧煉瓦の撤去を行った(図5-4、5-5)。化粧煉瓦の下は構造用煉瓦で組積されており、一段置きに出っ張りをつけた下駄歯積みと呼ばれる組積技術が用いられているが、張り替え時に出っ張り部分は斫りとり、接着面を均一にする処理が行われた。註浮きが生じた化粧煉瓦に対しては、以下の範囲でピンニングを行った26。使用したピンはSUS全ねじピン(化粧キャップ付き)径3mm、長さ90mm。異音部で縦方向1m(化粧煉瓦段数15段)以上の浮きが連続する壁面に対して、15段ごとに煉瓦一本おきにピンニングを行った(図5-3)。その他には、本工事以前に張り替えられた化粧煉瓦に対しては、1m2当たり32本のピンニングを行い、当初材と後補材では補修方法を変え、当初材の保存を図った。図5-3化粧煉瓦ピンニング箇所(浮き箇所を青枠で示す)(出典:重要文化財東京駅丸の内駅舎保存・復原工事報告書)?所見詳細な事前調査を行い、煉瓦の劣化状況を把握し、ひび割れ、浮きに対して範囲を限定して、差し替え、またはピンニングが行われた。ひび割れに対して注入を行っていれば、さらに差し替え範囲を減らす結果になったと思われる。表5-1化粧煉瓦の保存と撤去の区分と状態ひび割れた化粧煉瓦切断された構造煉瓦の一部張り替えられた化粧煉瓦表5-2ひび割れに対する補修方法の検討図5-4撤去される化粧煉瓦の張り替え作業工程(断面)ひび割れ撤去する化粧煉瓦図5-5ひび割れた化粧煉瓦の交換範囲(立面)93