ブックタイトル未来につなぐ人類の技17 煉瓦造建造物の保存と修復

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概要

未来につなぐ人類の技17 煉瓦造建造物の保存と修復

註205.2.煉瓦差し替えの判断基準名称:韮山反射炉建設年:安政4年(1857)構造形式:煉瓦造面積3,016m2所在地:静岡県伊豆の国市中268所有者:国(文部科学省)管理者:伊豆の国市指定・登録(指定・登録年月日):史跡(1922.03.08)調査期間平成25、27、29年度?対策の経緯韮山反射炉に使用されている煉瓦は、江戸時代末期に焼成され、国内の煉瓦史の変遷を語る上でも価値が高い(写真5-9)。この反射炉は現在に到るまでに3度の大規模修理(明治42年、昭和32年度、昭和60~63年)が行われ、修理工事のたびに劣化註した当初部材の差し替えが行われてきた21。しかし、近年新たに煉瓦の劣化が確認され(写真5-8)、差し替え範囲を最小限に抑えるために、劣化状態に関する詳細な調査が行われた。?対策の概要2万本を超える煉瓦に対して、個別に電子カルテが作成された(図5-2)。掲載さ註れている項目は以下の通りである22。1煉瓦位置、2年代、3刻印の有無、4補修工事などで書き込まれたメモ書きの有無、5表面の劣化(軽・中・重・なし)、6クラックの有無、7割れの有無、8目地やせの有無、9汚れの有無、10煉瓦壁面に残る漆喰の有無註23?劣化の判断基準各煉瓦の劣化の程度が以下の基準に沿って判断された。劣化(軽度):断面欠損が表面程度のもの劣化(中度):断面欠損が1/2以下程度のもの劣化(重度):断面欠損が1/2以上程度のものクラック割れ目地ヤセ汚れ漆喰の残存:表面にクラックが確認できるもの:より幅の広いクラックにより煉瓦が破断しているもの:目地が流出し、煉瓦間に間隙が確認できる箇所:煉瓦表面に主に雨水による汚れが確認できる箇所:煉瓦表面に漆喰がはっきりと残存しているもの漆喰残存不明:煉瓦表面に漆喰と疑わしいものが確認できるもの漆喰なし:煉瓦表面に漆喰が全く残存していないもの写真5-8煉瓦壁面の劣化状況?所見煉瓦を一本づつ管理をすることで、詳細な経過観察が可能になる。また、劣化の経過を修理工事に関連づけることで、差し替え範囲を抑えることが可能になる。写真5-9当初煉瓦の現状(当初材に打刻されている丸印の刻印を赤色四角枠で示す)図5-2韮山反射炉の煉瓦電子カルテ(提供:伊豆の国市世界遺産課)92第6章煉瓦造建造物の保存と修復に関する事例集