ブックタイトル未来につなぐ人類の技17 煉瓦造建造物の保存と修復

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概要

未来につなぐ人類の技17 煉瓦造建造物の保存と修復

現状変更に伴い漆喰塗仕上げで復旧セメントグラウト材注入工法による止水目地新設地下水の吸い上げ煉瓦壁の表面に塗られたモルタルで水分が蒸発せず、煉瓦材の表層に水分が溜り、冬期間になると水分が凍り、膨張して煉瓦材を破断させる。凍て割れ止水目地で止められた水分は、発散性のある煉瓦面や漆喰面から蒸発する。▼修理前FL写真5-4凍結破砕(止水処理前)(写真提供:文化財建造物保存技術協会)▼竣工時FL(旧土間叩きの復旧)▼WL地下水の吸い上げ防水モルタル塗布ジャンカ部分が多い【施工後】【施工前】写真5-5止水層設置後の現状(2017年2月撮影)図5-1止水層設置の概要図(図版提供:文化財建造物保存技術協会)3目地材除去部分洗浄作業(写真5-6)目地材を除去した部分へ高圧水を噴射し、洗浄する。5煉瓦壁削孔作業を含め第一工程の繰り返し1?4までの工程を繰り返す。6煉瓦壁削孔部分補修作業ワイヤーソー挿入用の孔をモルタルで充填する。写真5-6除去部分の洗浄(写真提供:文化財建造物保存技術協会)4無収縮モルタル充填作業(写真5-7)必要に応じて、事前に吸水防止処理を行う。目止めの要所に注入孔と空気孔を設け、充填前の目地部分との目止めにスタイロフォームを施し、モルタルを充填する。写真5-7目地置換(写真提供:文化財建造物保存技術協会)?所見工事前、機関車庫壁面は地下水が侵入し、冬期にモルタル壁面と煉瓦壁面の間で凍結破砕を発生させ、仕上げ材のモルタルに亀裂が発生していた。当初は、壁面の亀裂の発生メカニズムが不明であったが、地下水の吸い上げであることが判明したことから、侵入経路を防ぐため、止水処理が施された。従来の修理工事では、煉瓦壁面に材料劣化が発生している場合であっても、撥水剤の塗布による対応だったが、今回の工事では、侵入に対するより根本的な対策が講じられた。竣工から7年以上が経過しているが、止水対策以前に凍結破砕によって亀裂が生じていた壁面は、健全な状態が保たれている(目視確認)。ただし、止水対策を行わなかったピット床面に敷かれた煉瓦は、現在で註も凍結破砕が発生している19。このことからも止水層の設置は効果的であると判断できる。改変箇所も、地表面近くの水平目地一層分に限られるため、文化財価値への影響も限定的である。91