ブックタイトル未来につなぐ人類の技17 煉瓦造建造物の保存と修復

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概要

未来につなぐ人類の技17 煉瓦造建造物の保存と修復

5.劣化・破損に対する補修対策第2章でまとめた劣化・破損の現状の課題を踏まえ、今後の煉瓦造建造物の保存修理を考える上での参考事例を紹介する註17。5.1.水分の侵入の抑制名称:旧手宮鉄道施設機関車庫三号建設年:明治18年(1885)構造形式:煉瓦造、鉄板葺建築面積118.57m2所在地:北海道小樽市手宮一丁目所有者:小樽市指定・登録(指定・登録年月日):重要文化財(2001.11.14)工事期間:平成18年度?平成21年度写真5-1旧手宮鉄道施設機関車庫外観?工事の経緯保存修理工事の実施前、当該建造物には、内壁の広範囲に亀裂が見られた(写真5-4)。その原因を調査したところ、土地の地下水位が高く、地下水を吸い上げた煉瓦壁面において凍結破砕が発生していることが確認された。内壁の表面は、モルタル塗りで仕上げられており、吸い上げた水分の凍結が仕上げ壁と煉瓦壁との隙間などで発生し、モルタルを押し出す形となり、凍結した箇所に亀裂が生じていた。そこで、地下水の吸収を抑制するため、地表面近くの煉瓦目地材を止水効果のある目地材に置換する補修工事が実施された註16。本事例集では、目地材の置換工事について紹介す註る(図5-1 17)。?工事の概要布基礎のコンクリート部分は、地下水の侵入により、モルタルが流れ出し、ジャンカ状態(セメントと砂利が分離したような状態)となっていたため、基礎の表面に防水モルタルを塗布した。また、煉瓦壁への水分の侵入を抑制するため、煉瓦壁の根積み部分の目地1段分を無註収縮セメントに置換し、止水対策を実施した18。・材料について止水材:太平洋ユーロックスセメント(無収縮セメント(スラリータイプ)、太平洋マテリアル(株))目止め材:エレホン#300(エレホン・化成工業(株))・作業工程について1煉瓦壁削孔作業(写真5-2)500mm間隔(水平方向)で目地材にワイヤーソー挿入用の孔を開ける。写真5-2コア削孔(写真提供:文化財建造物保存技術協会)2目地材除去作業(写真5-3)ワイヤーソーを挿入し、500mm分の目地材を除去する。ワイヤーソーは目地幅に合わせてφ6 ? 9mmのものを使用する。写真5-3ワイヤーソーによる切断(写真提供:文化財建造物保存技術協会)90第6章煉瓦造建造物の保存と修復に関する事例集