ブックタイトル未来につなぐ人類の技17 煉瓦造建造物の保存と修復

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概要

未来につなぐ人類の技17 煉瓦造建造物の保存と修復

4.管理の中で実施可能な対策4.1.はじめに第2章、第3章で整理した課題に対して、管理の中で実施可能な対策を紹介する。4.2.雨水対策劣化の根本的な要因は、煉瓦・目地内部への水分の侵入である。侵入経路を大別すると、屋根からの侵入、壁面からの侵入、地下からの吸い上げ、の3つである。地下からの吸い上げに関しては、大規模な環境改善工事が必要となるため、第5章で紹介する。本章では、屋根付近での樋の管理、壁面での樋の管理、雨水の排水について述べる。?壁面での樋の管理雨樋を固定するために、外壁面に木煉瓦が差し込まれている場合がある(写真4-2)。この木煉瓦に水分が侵入し、そこから内部の煉瓦へと流れ込んでいくため、塩類劣化が樋周辺の壁面で発生する場合がある。また、木煉瓦を固定するために合成樹脂の接着剤が用いられている場合には、紫外線や熱による膨張や収縮により亀裂や隙間が生じ、そこからも水分が侵入する可能性がある。そのため、木煉瓦、接着剤の状態を定期的に点検し、劣化の進行速度によっては木煉瓦の使用を改める必要がある。?屋根からの雨水の侵入について写真4-1は、雨樋が一部落下し、雨水の集水処理がされないまま壁面へ流れている状況である。そのため、屋根へ降った雨水が壁内へと侵入し、内部および外部のいずれにおいても塩類劣化が発生し、壁面の粉状化・剥離が進行している。写真4-2雨樋を固定する木煉瓦からの侵入?雨水の排水管理雨水処理において、排水位置および経路を整えることも重要である。写真4-3では、地表面に近い位置から真下へ向かって雨水が排水されているため、水の跳ね返りが壁面の汚損または劣化を引き起こしている。そのため、排水口を煉瓦壁面から離れていく方向に向けることが望ましい。写真4-1屋根からの水分の侵入?屋根付近での樋の管理雨樋を適切に維持管理することは、建造物を保守管理する上でも重要である。写真4-1では、樋付近で草本類の繁茂が確認できることから、樋の内側や樋付近に、草本類が生長できるだけの土壌があると推測することができる。この事例では、建造物の横に屋根の高さを上回る樹木があり、その樹木の落ち葉が樋に溜まり、水を吸った落ち葉の重みで樋を傷め、さらに落ち葉が草本類の養分となった可能性が高い。そのため、樹木の伐採や定期的な枝払いなどで、周辺環境を整える必要がある。写真4-3雨樋の雨水処理4.3.生物劣化対策?地衣類・藻類の除去地衣類・藻類は、草本類などが生長できない環境であっても発生する(写真4-4)。目地部分を中心に地衣類・藻類が発生し、壁面を汚損するが、コケ類や草本類など煉瓦に亀裂を生じさせる生88第6章煉瓦造建造物の保存と修復に関する事例集