ブックタイトル未来につなぐ人類の技17 煉瓦造建造物の保存と修復

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概要

未来につなぐ人類の技17 煉瓦造建造物の保存と修復

?凍結破砕・凍結破砕について凍結破砕は、煉瓦内部へ水分が侵入し、その水分の水温が零下を下回った時に凍結し、体積膨張することで、煉瓦に亀裂が生じる現註象である(写真2-5,2-6)4。水の侵入写真2-5凍結破砕した煉瓦の表面凍結によって煉瓦に亀裂が発生している。写真2-6地下水が侵入した底面煉瓦湿潤な環境で、見学用の照明設備を設置しているため、植物の繁茂も確認できる。・凍結劣化が発生する環境煉瓦内部の水分が零下を下回る環境で発生するため、寒冷地に立地する建造物ならではの劣化現象と言える。本調査では、旧手宮鉄道施設機関車庫(北海道)内の鉄道車両整備用ピットの底面煉瓦にて、凍結破砕の現象を確認した。その他に、旧阿仁鉱山外国人官舎(秋田県)の外壁面でも、凍結破砕と考えられる亀裂によって剥落した煉瓦を確認した。亀裂発生水分の凍結零下図2-2凍結破砕の概略図?生物劣化生物劣化は、地衣類、藻類、コケ類、草本類や樹木類の発生、繁茂によって発生する劣化をさす。水の供給や立地環境などが影響しており、煉瓦や目地表面で発生・繁茂することで、根の生長などによって煉瓦を破損させる。地衣類、藻類が発生することで(写真2-7)、それらを土壌(養分)として、より深刻な劣化に繋がる草本類などが繁茂する恐れがある。これを生物遷註移と呼び5、生長した生物の根から水分が侵入するなどして、塩類劣化や凍結破砕へと発展する場合がある。地衣類、藻類が煉瓦壁面に与える主な影響は汚損である。コケ類は壁面の汚損の他に、コケ類の根である仮根(かこん)が生長することで、煉瓦表面を破損させることがある(写真2-8)。草本類や蔦植物では、根の生長により、煉瓦や目地に亀裂を発生させる(写真2-9)。さらに樹木類では、煉瓦単体ではなく構造躯体に深刻な破損を発生させる場合がある。写真2-7地衣類・藻類の発生目地部分に地衣類・藻類が発生しており、美観を損なっている。写真2-8コケ類の発生目地部分にコケ類が発生している。煉瓦壁面の黒色は、戦時中の迷彩塗装である。写真2-9草本類の繁茂目地部分から草本類が繁茂している。80第6章煉瓦造建造物の保存と修復に関する事例集