ブックタイトル未来につなぐ人類の技17 煉瓦造建造物の保存と修復

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概要

未来につなぐ人類の技17 煉瓦造建造物の保存と修復

2-3.個別の概要?塩類劣化水の侵入写真2-1塩類劣化した煉瓦の表面塩類の析出により表面剥離が進行写真2-2塩類劣化した目地目地に顕著な塩類劣化が発生し、目地材が粉状化し、欠損している。塩類の析出乾燥写真2-3塩類劣化した煉瓦一部の煉瓦に塩類劣化が生じ粉状化写真2-4塩類劣化した壁面煉瓦内壁面が漆喰仕上げとなっているが、その漆喰表面を中心に塩類劣化が発生し、綿状に塩類が析出した。析出箇所を赤枠で示す。図2-1塩類劣化の概略図・塩類劣化の発生について塩類劣化は、煉瓦や目地内部に侵入した水分が気化する際に、水分に溶け出した塩類が空隙部や表面で結晶化(体積膨張)することで、煉瓦を破損させる現象である(図註2-1)1。煉瓦造建造物では、屋根の雨漏り、壁面からの水の侵入、地下からの水の吸い上げなどによって塩類劣化が発生し、表面剥離、粉状化などの劣化を引き起こす。・塩類について煉瓦内部へ侵入した水や、その水に溶け出した煉瓦の成分の中にある、酸由来の陰イオンと塩基由来の陽イオ註ンが結合したものが塩となる2。・代表的な塩硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウムなど・酸由来の陰イオン塩化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオンなど・塩基由来の陽イオンナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンなど註3・塩類劣化の事例塩類劣化の発生箇所については、材料の透水性が大きく関係していると言われている。写真2-1では、一部の範囲で集中的に塩類が発生し、煉瓦表面を剥離させている。写真2-2、2-3では、一部の煉瓦や目地の透水性が高かったため、水分がその材料に集中したことにより、塩類劣化が発生したものと考えられる。写真2-4では、内壁側から綿状の塩類と考えられる成分が析出している。内壁は、煉瓦表面に漆喰塗り仕上げが施され、塩類はその漆喰壁の表面から析出している。79