ブックタイトル未来につなぐ人類の技17 煉瓦造建造物の保存と修復

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概要

未来につなぐ人類の技17 煉瓦造建造物の保存と修復

固有周期が短いほど大きく揺れ、長くなると小さくなることを表す。短周期でイタリアが、長周期で日本が大きい値となる傾向が見られる。加速度1,000ガルを越える地震波も観測されている(スライド2)。地域係数日本の建築基準法では、地震を想定する地域ごとに逓減/係数をかけて地震の力を小さくすることができるようになっている。日本では1.0が一番厳しく、その他例えば東北地方や九州では、0.9あるいは0.8と地震の力を低減することができる。過去の地震頻度に基づいて定められている。イタリアではモデナ先生の説明にあったように、地域によって地震の大きさが定められており、日本と比べると大きさに幅があり、厳しいところを1.0とすると、緩いところでは0.14相当とかなり小さい(スライド3)。煉瓦造の耐震診断について日本において煉瓦造の診断指針のようなものはない。重要文化財について蓄積されてきた方法を参照しつつ、耐震診断の進め方をまとめようとしている。→既存RC造の診断方法の準用、保有水平耐力計算、エネルギー一定則に基づく解析、時刻歴応答解析など様々な方法により解析を行う。さらに、煉瓦造特有の局所的な破壊についての検討を行う(スライド4)。煉瓦造建造物の特徴的な破損煉瓦造建造物の特徴的な破損を図にまとめた(スライド5)。?塔屋や煙突などの突出部、手摺や妻の三角の壁(独立壁)が倒れる。?垂直方向に繋がる壁にひっぱりが生じて割れる。?長い壁の頂部が振られて壁が面外に倒れる。?開口部まわりからのひび割れの発生。などが代表的な破損である。煉瓦造建造物の構造的特徴妻面の面外変形塔屋の傾斜壁頂部の面外破壊木造小屋組の煉瓦壁頂部から脱落日本:1.0~0.7イタリア:1.0~0.14相当スライド3煙突の脱落構造調査構造解析1建物全体の破壊の検討構造解析2局所的な破壊の検討手摺壁の脱落・煉瓦・目地・強度試験・壁の亀裂の調査ほか建物が地震を受けてどのように変形したのかを様々な調査方法を用いて調べる・鉄筋コンクリート造耐震診断法の準用-壁のせん断力が主な耐震要素となる・保有水平耐力計算・エネルギー一定則に基づく解析・時刻歴応答解析・煙突、ペディメント、塔屋など突出部の破壊・壁頂部の面外破壊・壁取り合い部、開口部周りのひび割れ開口廻りの亀裂壁頂部の面外変形壁取り合い部の亀裂壁取り合い部の亀裂壁頂部の面外破壊スライド4スライド5近年の診断・補強事例事例1岩手銀行(旧盛岡銀行)旧本店本館(スライド6)辰野葛西事務所による設計。東日本大震災時に発生した軽微な破損を契機に保存修理を開始。壁量が比較的多い建物である。スライド6は解析に用いた図の例。部分的に破損があったとしても、全体としては崩壊には至らないであろうと判断した。スライド7,8は構造補強の状況。事例2シャトーカミヤ旧醸造場施設(スライド9~15)岩手銀行(旧盛岡銀行)旧本店本館建築年代:明治44年(1911)構造形式:煉瓦造、建築面積693m2、二階建、銅板葺事務室修理前外観修理前内部平成24年(2012年)まで現役の銀行として使用。平成24年~平成28年(2012~16)保存修理工事。保存修理に併せて耐震診断、補強を実施。診断:壁量に基づく検討と部分的な有限要素法解析による。クライテリア:中地震動(C0=0.2)に対し面内せん断応力度が短期許容応力度以下。+大地震動(C0=1.0)も確認(余力1.5倍程度)。面外方向については解析モデルを用い、突出部(煙突、妻壁)については別途検討。スライド6解析モデル65