ブックタイトル未来につなぐ人類の技17 煉瓦造建造物の保存と修復

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概要

未来につなぐ人類の技17 煉瓦造建造物の保存と修復

図6補強図図7補強詳細図クリート梁を挿入する。小屋梁高さと上層階床高さに短辺方向のタイビームを設置し、屋根の下地は板材によって補強する。また、下層階の柱の補修に当たっては、鉛直応力が集中している部分の水平目地を一度切り、その後目地を補修することで、柱断面に鉛直荷重が均等にかかるようにする。工事は現在も継続中である。5.結論以上のように、イタリアではフリウリ地震以降、約40年間、地震被害を繰り返しながら文化財建造物の耐震対策方法が検討されてきたことが分かる。これは日本が兵庫県南部地震をきっかけに、約30年間に渡って対策方法を検討してきたことと類似している。一方で日本が木造文化財建造物の経験を積んできたのに対し、イタリアでは組積造文化財建造物の対策経験を重ね、耐震診断や耐震補強、モニタリング、被害時の応急補強等の考え方・方法を開発してきており、その内容は、現在、日本が取り組みを本格化し始めた組積造の近代建築文化財の耐震対策の在り方を考える上で、参考になる。また、現代工法による補強が地震被害の要因となったり、歴史的建造物が群として被害を受けるなど、近年、重ねて来た様々な経験は、日本ではまだあまり見られない点で、この経験を基に行われて来た議論や対応は興味深い。また、その中の一つであるが、イタリアの文化財建造物の対策の多くで性能向上補強という方針を採っている点は、日本が近年の対策の多くにおいて、基準充足補強に近い方針で行っていることと大きく異なっているといえよう。謝辞本報告をまとめるに当たり、パドヴァ大学のクラウディオ・モデナ教授に多くの情報の提供と、貴重な意見を頂いた。ここに謝意を表する。出典図1,2図4,5図6図3,7-16Dopo la polvere : rilevazione degli interventi di recupero post-sismico del patrimonio archeologico, architettonico ed artistico delle regioniCampania e Basilicata danneggiato dal terremoto del 23 novembre 1980 e del 14 febbraio 1981 (anni 1985-1989). Italia: Ministero per ibeni culturali e ambientali. Soprintendenza generale agli interventi post-sismici in Campania e Basilicata筆者撮影Linee Guida per la valutazione e riduzione del rischio sismico del patrimonio culturaleモデナ教授提供参考文献? D'Agostino, Silvano, and Carlo Viggiani. "Seismic protection and conservation of the monumental heritage." Annals of Geophysics 36.1 (1993).? Modena, Claudio. "Repair and upgrading techniques of unreinforced masonry structures utilized after the Friuli and Campania/Basilicataearthquakes." Earthquake Spectra 10.1 (1994): 171-185.42第4章イタリアにおける組積造建造物の耐震について