ブックタイトル未来につなぐ人類の技17 煉瓦造建造物の保存と修復

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概要

未来につなぐ人類の技17 煉瓦造建造物の保存と修復

は不可能である、との指摘もある(長谷川2012、p.70)。重要文化財では、指定前の施工となるが旧金澤陸軍兵器支廠(写真7,8)、舞鶴旧鎮守府倉庫施設弾丸庫並預兵器庫、指定後に施工がなされた舞鶴旧鎮守府倉庫施設雑器庫並預兵器庫(赤れんが工法)がある。3.4.外部からのバットレス補強壁の面外変形を防止するため、バットレスを壁面に設置する補強方法。煉瓦壁の外壁側にアンカーボルトを埋設し、鉄骨柱をボルトで緊結、壁と鉄骨フランジとの間に無収縮モルタルを充填する。利点は、内部仕上げを保存できること、補強鉄骨の重量が軽量で済むこと、将来的には撤去可能であること、などがあげられる。文化財としてのオーセンティシティを考慮すれば、可逆性に優れたバットレス補強は評価されるべきである。重要文化財旧山形県会議事堂(写真9,10)で実施された、外観に露出するバットレス補強は、「つっかえ棒」と揶揄されることもあったが(巻頭座談会1989、p.34)、その採用の背景には、当初はほとんど失われていると思われていた内部仕上げについて、地道な調査を重ねパズルのピースのようにあてはめていった膨大な現場の努力がある。その結果、内部仕上げを残すという明確な方針が打ち出され、内部を守るため外部にバットレスを設ける選択がなされた。旧山形県会議事堂のバットレス補強については、「内装を完全復原するために外部に構造補強部材がむき出しとなってもやむを得ないという発想の転換があった」(中村2000、p.22)との指摘もあり、煉瓦造文化財の保存の考え方に一石を投じる重要な事例であったことがうかがえる。バットレス補強の例としては、平成25年に修理が行われた重要文化財シャトーカミヤ醗酵室で、地下にある貯蔵倉庫に影響を与えないように、外部バットレスが採用されている(写真11,12)。また、重要文化財ではないが、平成14年に改修を受けた立教大学第一食堂は、煉瓦造の食堂棟に鉄筋コンクリート造の厨房棟を附帯させて、食堂ホールの地震力を伝達し、負担させている。これも外部補強による解法のひとつと考えられるだろう(横田2006)。3.5.鋼板補強煉瓦壁の内側に、鋼板を取り付けて補強する工法。鋼板の煉瓦壁への固定方法には、ボルト・接着剤・樹脂鉄写真7旧金澤陸軍兵器支廠(現石川県立歴史博物館)写真9旧山形県会議事堂写真8旧金澤陸軍兵器支廠(現石川県立歴史博物館)写真10旧山形県会議事堂バットレス補強25