ブックタイトル未来につなぐ人類の技17 煉瓦造建造物の保存と修復

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概要

未来につなぐ人類の技17 煉瓦造建造物の保存と修復

分が23寸(697mm)、つまり同モデュール1単位分7.67寸(232mm)の煉瓦モデュールが混在していると考えて、仮に同モデュール15単位分が、後者の小さい煉瓦モデュールで寸法調整処理されているとすれば、上記の寸法差の0.125尺(39mm)を吸収することができる。整理すると、1 A-B壁およびD-E壁はともに、長手煉瓦モデュールは25.5単位あり、両者計が51単位である。2同モデュールが均一に7.75寸(235mm)とした場合、A-B壁およびD-E壁の寸法計は(51×0.775=)39.525尺(11,976mm)となる。3 51単位のうち15単位を同モデュール7.67寸(232mm)、つまり同モデュール3単位分が23寸(697mm)とすると、寸法計は(2.3×5=)11.5尺(3,485mm)となる。4残りの36単位を同モデュールが7.75寸(235mm)、つまり同モデュール4単位分が31寸(939mm)とすると、寸法計は(3.1×9=)27.9尺(8、451mm)となる。5 3および4を合算すると、(11.5+27.9=)39.4尺(11,938mm)となる。6 5に示す寸法調整をすることによって、2の寸法計から(39.525-39.4=)0.125尺(39mm)を減じることができる。A-B壁およびD-E壁のどこかにおいて、同モデュール15単位分が3の処理がなされていると推定する。その際、施工の段取り上、3単位分が一つのまとまりとなっていると合理的であると考えられる。そうすると5つのまとまりが想定されるが、これをA-B壁とD-E壁に振り分けた場合、A-B壁:D-E壁=2:3、1:4、0:5もしくは、5:0、4:1、3:2が考えられる。いずれにしても寸法上、壁面の左右対称性は崩れる。改めて実測値を観察すれば、D-E壁の引き通しの寸法は、A-B壁の同寸法よりわずかに値が小さく、平均値において14.3mmの差が出ている。図11にA-B壁の煉瓦配列、図12にD-E壁の同配列を示し、煉瓦寸法が平均値より小さい煉瓦を黄色く(薄く)網掛けした。同両図からは、小さい煉瓦がまとまって積まれている傾向が伺われ、かつ妻面の中心の方向、つまりA-B壁では右方、D-E壁では左方にまとまっている傾向が伺われる。ただし、14.3mmの寸法差が発生している要因については同両図からは読み取れない。実際は、C柱形の寸法と合わせて、A-B壁およびD-E壁において精妙な寸法調整が実施されていると推定される。以上のように、少なくとも同じ壁面のなかで異なる寸法の煉瓦が、ある意図をもって積まれている。しかし、東京形と異なる寸法の煉瓦がどのように調達されたのであろうか。特注されたのかどうか、記録には記述が無い。図12D-E壁の煉瓦配列16第2章煉瓦積み構工法の技法と価値