ブックタイトル未来につなぐ人類の技17 煉瓦造建造物の保存と修復

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概要

未来につなぐ人類の技17 煉瓦造建造物の保存と修復

7.3.旧島津公爵家袖ヶ崎本邸洋館(清泉女子大学本館)名称:旧島津公爵家袖ヶ崎本邸洋館(清泉女子大学本館)建設年:大正6年(1917)構造形式:煉瓦造、地上二階地下一階建、スレート葺建築面積:876.21m2所在地:東京都品川区東五反田3-191-39清泉女子大学内所有者:学校法人清泉女子大学指定・登録(指定・登録年月日):東京都指定有形文化財(建造物)(2012.03.21)工事期間:平成21年度?工事までの経緯明治39年に島津家が工部大学校造家学科教授であったJ・コンドルに設計を依頼し、大正4年に竣工した建物。その後、金融恐慌や第二次世界大戦の影響により日本銀行に売却され、戦後はGHQの将校宿舎として昭和29年まで使用された。接収解除後の昭和36年に、現在の所有者である清泉女子大学が、日本銀行から土地と建物を購入し、教育施設として使用を続けてきた。そして、平成21年5月から平成22年3月にかけて、本館の耐震補強工事、屋根並びに空調内装工事が実施された(写真7-8)。?補強計画工期を10ヶ月とし、校舎として使用しながら工事を行うという2つの条件を満たす方法が検討され、4つの工法を比較検討した結果、プレストレス補強工法が選択註された(表7-1)48。また、鋼棒を挿入する縦孔の削孔には、従来の有水削孔ではなく、極低温に冷却した空気を送り込む技術(無水削孔技術)がわが国で初めて導入された。工事では、表7-1検討された構造補強方法(資料提供:一般財団法人建築センター評定部木林長仁審議役)RC造耐震壁置換え補強煉瓦壁をRC壁に置換えRC工法概要壁量で性能確保鋼板耐震壁補強煉瓦壁面に鋼板壁増設鋼板量で性能確保水平構面×水平伝達機構が必要△ある程度必要基礎計画×RC壁の基礎が必要×基礎補強が必要施工性×騒音・振動・粉塵×騒音・振動・粉塵△比較的工期を要する×工期を要する(18ヶ月程施工工期(16ヶ月程度)度)施工範囲×室内壁面と床面全面×室内壁面と床面全体仕上工事×仕上の撤去・復旧必要×仕上の撤去・復旧必要仮設工事×室内足場必要×室内足場必要居室使用×居室使用不可×居室使用不可コスト×内装復旧費用が大×内装復旧費用が大性能確認構造計算・RC耐震壁構造計算・S耐震壁接着部その他2階ホール天井いたみ対策必要ダボ鉄筋補強厚煉瓦壁内に鉄筋挿入ダボ鉄工法概要筋で性能確保2階ホール天井いたみ対策必要プレストレス補強厚煉瓦壁内にPS力導入圧縮力・PS鋼棒で性能確保水平構面○あまり要しない○あまり要しない基礎計画○基礎は鉄筋挿入のみ△基礎はPC鋼棒定着施工性×騒音・振動・粉塵○削孔騒音程度△比較的工期を要する施工工期(14ヶ月程度)○一般的(10ヶ月程度)施工範囲△室内壁面全体○屋根部分と基礎のみ仕上工事×仕上の撤去・復旧必要△仕上の撤去:復旧不要屋根のみ撤去:復旧仮設工事×室内足場必要△素屋根必要室内足場不要居室使用×居室使用不可○居室使用の可能性コスト×内装復旧費用大○内装復旧は不要だが屋根回収が必要性能確認性能確認実験が必要性能確認実験が必要その他2階ホール天井いたみ対策必要屋根撤去時天井いたみ対策可能写真7-9建物外観写真(写真提供:文化財保存計画協会)凡例○:良い、△:多少問題あり、×問題あり写真7-10泉の間(大客室)(写真提供:文化財保存計画協会)110第6章煉瓦造建造物の保存と修復に関する事例集