ブックタイトル未来につなぐ人類の技17 煉瓦造建造物の保存と修復

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概要

未来につなぐ人類の技17 煉瓦造建造物の保存と修復

7.2.旧手宮鉄道施設機関車庫三号名称:旧手宮鉄道施設機関車庫三号建設年:明治18年(1885)構造形式:煉瓦造、鉄板葺、引込線付属建築面積:118.57m2所在地:北海道小樽市手宮一丁目所有者:小樽市指定・登録(指定・登録年月日):重要文化財(2001.11.14)工事期間:平成18年度?平成21年度?工事までの経緯手宮鉄道施設は明治14年に開業した幌内鉄道の終点として建設、整備された施設で、現在の機関車庫三号は、明治18年に竣工した(写真7-6)。明治15年には工部省へ移管され、翌年には農商務省、明治19年には北海道庁、明治21年には民間組織の北有社に経営が任され、その翌年には北海道炭礦鉄道株式会社へ払い下げられた。その後も所管が数度変更し、平成13年に北海道旅客鉄道株式会社から小樽市へ無償譲渡されて、現在に至る。その間、建物の改築もたびたび行われており、煙突の撤去、屋根の葺き替え、正面アーチ積みの開口部の変更などが実施されている。機関車庫三号は、平成17年度に実施した構造検討を踏まえた構造補強、経年劣化による劣化箇所の補修、建物を安全に活用(機関車庫としての機能回復)するための復旧等を目的として、平成18年6月から平成22年3月にかけて保存修理事業が註実施された44。?当初の補強計画機関車を整備する土間下のピットの範囲が不明であったため、最小限の基礎を計画し、以下のように構造補強計画がたてられた(図7-6)。1基礎梁を設置し、補強柱の柱脚をピン結合とする。2正面アーチ部分の変形を抑制するため、内部両側からバットレスを設置し補強する。3妻面の陸梁上部の壁面の変形を抑制するため、壁面の形状に合わせたバットレスを設置。4劣化した木造トラスの取り替え、または交換。5水平剛性を確保するために水平ブレースを設置。?補強方法の変更の経緯半解体調査により、当初のピットが発見されたことで、一部で基礎梁による補強が困難となったため、構造補強部材を支持するための地盤改良杭を造成する工法へと変更した。さらに、柱脚をピンから固定へと変更し、さら註に補強部材の形状、配置も再検討された45。?変更後の構造計画変更内容は以下の通りである(図7-7)。写真7-6手宮鉄道施設(左から機関車庫一号、転車台、機関車庫三号)1柱脚をピン結合から剛結合へと変更することでラーメン構造としての耐力を確保した。2柱脚を剛結合とするため、支持地盤の深さまで地盤改良杭を造成した。図7-6当初の構造補強案(出典:重要文化財旧手宮鉄道施設(機関車庫三号ほか)保存修理工事報告書)図7-7変更後の構造補強(出典:重要文化財旧手宮鉄道施設(機関車庫三号ほか)保存修理工事報告書)108第6章煉瓦造建造物の保存と修復に関する事例集