ブックタイトル未来につなぐ人類の技17 煉瓦造建造物の保存と修復

ページ
109/130

このページは 未来につなぐ人類の技17 煉瓦造建造物の保存と修復 の電子ブックに掲載されている109ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

未来につなぐ人類の技17 煉瓦造建造物の保存と修復

断面を箱型で覆う処理が施され、バットレスの先端部のおさまりについても50%、80%、100%に絞った原寸大模型を制作して、本体に当てながら現場確認を行い、最終的に80%に絞り込んだ形状に決定した(写真7-4、7-5)。形状に加え、塗装の検討も行われた。錆の発生による劣化が懸念されたため、防錆・防食に優れた金属溶射(アルジン溶射)による皮膜で覆う処理が行われた。塗装は、無機質な色をイメージしており、煉瓦とも石材とも違う色が検討され、溶射された材料本来の色である黒灰色が選択された。?その他の構造補強バットレスの補強以外に県会議事堂では、以下の補強が計画され、実施された。4南棟の廊下アーチ部分に鉄筋を水平に挿入。5南棟床梁脱落防止のため、煉瓦壁にアンカーボルトを埋設し、金物を介して床梁と結合。6議場小屋組に火打梁を設置。?所見県会議事堂では、解体調査によって当初計画していた内部からの補強を改め、外部から鉄骨バットレスを使用した補強へと構造補強を変更した。その際、煉瓦壁面へのダメージを極力抑えるよう様々な検討が行われた。また、劣化した煉瓦の修理についても、5-3で紹介しているように、劣化の状態に合わせて補修方法を変えるなどきめ細かい対応が図られている。また、煉瓦壁内に垂直削孔した事例としても最初期の事例である。1南棟二階および南棟一階東西下屋、演壇上部に鉄骨水平トラスを設置。2煉瓦の亀裂箇所にはエポキシ樹脂を注入し補強。3南棟の南壁面、演壇北面煉瓦壁部分に面外方向の曲げ補強として鉄筋を挿入。図7-5構造補強後の議場断面図(出典:重要文化財山形県旧県庁舎及び県会議事堂保存修理工事報告書1旧県会議事堂編)写真7-4原寸大構造補強模型設置(写真提供:公立大学法人長岡造形大学木村勉名誉教授)写真7-5議場西壁バットレス設置工事(右側の2階建が南棟)(写真提供:公立大学法人長岡造形大学木村勉名誉教授)107