ブックタイトル未来につなぐ人類の技16 近代文化遺産の保存理念と修復理念

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概要

未来につなぐ人類の技16 近代文化遺産の保存理念と修復理念

産業遺産のマネジメントロルフ・フーマンドイツ・産業考古学事務所長はじめに東京文化財研究所へ再びお招きいただいたことに感謝したい。私の記憶では、日本で発表を行う機械をいただいたのは今回で6回目である。本日の発表で紹介するヨーロッパの産業遺産には、日本の研究者の方々とともに訪問し、視察したものもある。今回の主なテーマは、大規模な産業遺産の保存と修復の2つの側面についてである。第一に、保存はより知識を必要とする側面であり、「どのように産業遺産を選定するのか」「政治的及び経済的な問題があるなかで、どのように産業遺産を保存するのか」「人々にとって価値のある遺産にすること」を担うものである。これは非常に重要な要素である。第二に、中山俊介室長がすでにご指摘されているが、「どのように大型構造物を取り扱うのか」「どのように修復するのか」「どのように活用するのか」「次の世代のために、どのように維持するのか」という側面である。過去30年間、私はこれら両方の側面から産業遺産の保存と修復に携わっている。多くの事例があるが、製鉄・製鋼業と鉱業のいくつかの産業遺産について、両方の側面を踏まえた経験を紹介したい。日本の事例紹介から始めることを不思議に思われるかもしれないが、この事例はヨーロッパでの産業遺産の保存と修復の発展にとって大変重要なものとなった。八幡製鉄所の東田第一高炉は1972年に休止されて以来、現在まで40年以上、モニュメントとして維持されている(写真1)。これは、大型産業構造物を保存・修復した最初の試みであり、我々がヨーロッパの大型産業構造物の保存を始めた際に、参考にした重要な事例であった。この高炉の保存・修復方針については、様々な意見があるかと思うが、最初の試みであったため、現在ではいくつかの改善点があることは理解できるだろう。ほぼ同時期に保存された唯一の事例は、アメリカのアラバマ州バーミンガムにある2基の高炉であ写真1八幡製鉄所東田第一高炉写真2デュースブルグ-メイデリッヒの2基の高炉産業遺産のマネジメント11