ブックタイトル未来につなぐ人類の技15 洋紙の保存と修復

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概要

未来につなぐ人類の技15 洋紙の保存と修復

合わせて補修費用も見積っていきます。補修作業の見積りというのが大体、作業時間を目安に考えております。例えば1時間で終わるのか、3時間で終わるのか。一応弊社は補修費用の上限というのを設けておりまして、大体6時間以上掛かる補修作業というのは、これが正しいかどうかは分からないのですが、修復レベルだよねという話になります。例えば虫食いが非常に激しくてページが固着しているような簿冊というのも含まれます。そういったものはそういった設備のある修復工房さまのほうとご相談していただきたい、ということになります。例えば先ほど水性処理の話が出ましたが、弊社には水性処理をするような設備が整っておりませんので、そういった処理が必要なものは、設備の整ったところに回していただきたく思います。あるいは簿冊1冊が丸々こんにゃく版だった場合には、当然脱酸処理はしません。それは媒体変換等を専門的に扱われる業者さまにご相談されることをお勧めします。担当の方には点検した資料の材料や劣化、損傷についてリスト化したものをお渡しします。そして担当の方はそのリストを見ながら、修復に必要なものについてのご質問などをされます。私どもはそういったことはこういった会社に相談されたらいかがでしょうかなど、かなりコンサルティング的な部分を含めた作業を行います。とじ方についてですが、例えば立てて保管するというのがご希望だった場合、ひもとじがしっかりしていて、板紙の表紙が付いていて、立てたときに資料が変形しなければ、そのまま箱を付けずにお返しします。ところが簿冊あるいは図書でも簡易製本などの場合は、そのまま置いておくと資料が変形してしまいます。縦に置いたときにたるんでしまうようなもの、そういったものにはホルダーやエンベロープといったものを提案して、それが長期的にその棚の中で変形しないように保管できるような提案をしています。とじというのも、現状で使えるとじひもはできるだけ使います。そういったところからでもコストを削減していかないと、何百冊、何千冊とやっていく場合に大変膨大なコストになってしまいます。そこを取捨選択していくのが大量の処理する場合、非常に難しい点かというふうに考えております。(横島文夫)●処理の選別について損傷が激しく、例えば虫損が大変激しいようなものは別の業者を紹介するとおっしゃいましたが、1冊の簿冊の中でそういった資料が数点混ざっていた場合、他のものは脱酸処理ができるというような簿冊に対しては、どのような対応をしていらっしゃいますでしょうか。1冊の簿冊の中でトータル1冊を単位として考えたときに、手作業として時間内にできると判断した場合は補修対象にいたしますし、たとえば部分的に劣化が酷いもの、例えば和紙が本当にぼろぼろな状態になってフケている場合がわずかでも含まれる場合はとても時間内での作業が完了しないので、修復処置のほうをご検討いただくようにお願いしています。(横島文夫)質疑応答より77