ブックタイトル未来につなぐ人類の技15 洋紙の保存と修復

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概要

未来につなぐ人類の技15 洋紙の保存と修復

質疑応答より以下は、平成26(2014)年11月21日に開催された研究会での質疑応答と意見を、抜粋及び編集したものです。●洋紙の脱酸処理について洋紙の場合、褐色、恐らくリグニンの問題に対して、脱酸では予防の方法はないということでしたが、水性脱酸を行って10年くらい経っても変色がほとんど進まない、あるいは色が薄くなったという事例が複数あります。脱酸はリグニンに対して効果がないという説は弱いのではないかと思います。また脱酸というものが始まった際にはミイラの分析がされています。ミイラの分析にアルカリリザーブをしているものは非常に保存性が良いという点が着目され、この脱酸処理が役立つのではないかというような歴史がありました。こういった他のマテリアルで百年、千年単位の歴史というものを検証すべきだと思います。まずリグニンについてですが、脱酸性化という中和を行うことによってリグニンの劣化が抑止できるということではなく、ブックキーパーで脱酸性化処理をしても茶色くなる、あるいはリグニンの劣化によって茶変色することを抑えられないことがあります。脱酸性化処理というものは紙資料すべての問題を解決するものではなく、その寿命を3から5倍にするものです。しかしやはりリグニンといった部分がまだ解決できません。水性処理でそういったものが改善できるということは私も存じ上げませんでしたので、そういった部分では決して水性処理、水性脱酸処理の効果を下げるような意味は持っていません。それからアルカリリザーブに関しては、私どもの会社でも本社と同じようにアルカリリザーブの測量、測定というのは非常に重視しております。米国議会図書館によれば、一般的な印刷用紙であれば0.8 ? 1%程度のアルカリ成分が紙の中に定着することで3 ? 5倍という延命効果を達成できるという研究が出ています。例えば新聞紙などに対しては1.5%以上のアルカリ成分を残す必要があります。1.5%のアルカリ成分を紙の中に残すというのは実現可能ではあるのですが、その1.5%が紙の種類によっては何年かで消費されてしまって、残りが0.何%のアルカリリザーブということになります。それが今後の長い年月、その紙の保存について働くというふうな発想になるので、アルカリリザーブというのは弊社のほうでも大変重視しておりまして、特に気を遣って測定管理、品質管理を行っている部分であります。(横島文夫)質疑応答より75