ブックタイトル未来につなぐ人類の技15 洋紙の保存と修復

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概要

未来につなぐ人類の技15 洋紙の保存と修復

図37ヘンリー・ジョン・ホワイト作(印刷者)、『聖書(ジェームス王版)』、1832年もしくは1833年制作、28.0 x 22.0 x 6.0 cm、LAC所蔵(AMICUS 23024642)様の方法が芸術品の裏打ち除去や、額やキャンバスといった様々な支持体からのラベル除去に用いられている。5-4 3次元作品の処置ゲランガムに最大限の柔軟性を持たせるためには、カルシウム塩水溶液を使わずに低濃度の薄いフィルムが必要である。逆浸透水で大変柔軟な3%のゲランガム・ゲルを作り、著しく変色した学校向け立体地図の凸凹した表面にゲルを押しつけるようにしてクリーニングを行った(図38a?c)。クリーニングが進むごとに、輪ジミを防ぐために、塗布部分が重なるようゲルを塗布していった。5-5ゲランガムを用いた還元型漂白剤ゲランガムに還元型漂白溶液を混ぜることで、シミ軽減処置方法の幅を広げることができる。酢酸カルシウム溶液(0.4g/L)にゲランガムを混ぜた後、ボラン-tert-ブチルアミンコンプレックス((CH3)3 CNH2. BH3)(7 g / L)を加え、コロイド懸濁液を電子レンジで熱する。ボラン-tert-ブチルアミンコンプレックスを扱う時は、適切な手袋、ゴーグル、防毒マスクといったきちんとした防護用品を身に付けることを忘れてはならない。溶液準備と保存処置は十分な排気の下で行い、ゲルは有害廃棄物として廃棄しなければならない。著しく劣化したオタワの鳥瞰図リトグラフには、広範囲にわたる処置を行った。裏打ちの除去、液浸、光漂白処置を行った後、酢酸カルシウム溶液に2%還元型漂白ゲルを混ぜ、それにボラン-tert-ブチルアミンコンプレックス(7g/L)を加えた。リトグラフを両面からキャストゲルシートではさみ、60分の処置を2回行ったところ、素晴らしい結果となった。ゲランガム・ゲルの透明性に比べると、還元的漂白ゲルは、不透明かつ乳白色をしている(図39a、b)。5-6ゲランガムを用いた脱酸処理法脱酸用のゲランガムの作製は、還元型漂白剤の作製方法と類似している。プロピオン酸カルシウム(3.5 ? 5g/L)を酢酸カルシウム食塩水(0.4g/L)に加えた後、ゲランガムを混ぜて、電子レンジで熱する。ゲランガムの塗布と溶液の調整は、以下の表にまとめる(図40)。ゲランガムは価値ある新材料として証明され、LACの保存修復研究室で使用されている修復材料倉庫に加えられた。ゲランガムには下記のような利点がある。?ゲランガムは安全である。簡単に準備・廃棄できる(注意:ボランゲルを除く)。?水分を均等に且つコントロールしながら放68