ブックタイトル未来につなぐ人類の技15 洋紙の保存と修復

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概要

未来につなぐ人類の技15 洋紙の保存と修復

り抜くことができる。敏感な媒体を覆うマスクを作る必要性を軽減できる。シミをマイラーの上で写し取り、その大きさに切り抜く。ゲルをシミの上に置き、マイラーで覆い、10分間重しを掛けた後、取り除く。紙製ドレスに用いられていた紙の吸水性は高く、水溶性劣化物質はゲルの中に引っ張られ、処置箇所の下に敷かれた吸い取り紙にも移動していた。表面の風合いには、変化はなかった(図32a?d)。シミがほぼ完璧に除去されるまで、この処置を繰り返し行った(図33a、b)。ゲランガムは、銀塩写真(シルバーゼラチンプリント写真)のシミの除去にも効果的に使用されている。長さ570cmの2枚のナイアガラの滝のパノラマ写真は、現在CCIで保存処置が施されている(図34)。劣化した乳化剤は水溶性であるため、酢酸カルシウム溶液で3%という硬めのゲランガムを作り、写真表面とゲランガムの間に和紙の間紙を使用した(図35)。角ばった輪ジミが残ることを避けるためゲルを円形状に切り抜き、その結果、シミは大幅に軽減された(図36a、b)。5-3補助支持層の除去カナダ国内で初めて印刷・出版された聖書の調査過程において、保存修復家は、本の背を覆っていた青い紙が聖書の広告の断片であることを発見した。処置目標は、その断片と下層の図32 a切り抜いたゲランガム・ゲルをシミの上に置く図32 bゲランガムの上にプレキシーグラスの重しを置く図32 c除去したゲランガム:紙への水分浸透は最低限である図32 dシミを除去して黄変したゲランガムと、下に敷いた吸い取り紙に移ったシミ図33 aトルドー・紙ドレス。保存修復前のシミのついた箇所。図33 b右:保存修復後のシミのついていた箇所。66