ブックタイトル未来につなぐ人類の技15 洋紙の保存と修復

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概要

未来につなぐ人類の技15 洋紙の保存と修復

R .)により初めて紹介された14)。pHを変えたり、界面活性剤、キレート剤、酵素といった様々な他の材料を混ぜたりすることで、特定のクリーニング用にオリジナルの硬質ゲルを作成することが可能である。紙の保存修復家は、40年以上も習慣的に、メチルセルロースやエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース系増粘化剤を用いてクリーニングを行ったり、漂白剤や酵素などの他の有効成分と混合したりして、湿布法にてゲルを使用してきた。紙製作品に対する硬質ゲル処置方法の応用は、一連の処置作業中にゲルマトリックス内で発生する毛管現象や洗浄剤の動きを制限することによって優れたレベルでの調整を可能にするものであり、紙の保存修復家達には大変興味深い方法である。ゲランガムは、生体医学、薬理学、食品産業分野で、増粘剤やゲル化剤として活用されており、生物分解性がありかつ安全である(図27a?c)。概略的な化学構造は、1つのラムノース(植物由来糖)分子と1つのグルクロン酸分子と2つのグルコース分子を含む4つの単糖類(すなわち単純な糖)が直鎖状に連結をしたものである(図28)。ソットジューとイアンヌッチェッリが行った様々な硬質ゲランガム(フィタゲル・ゲラン、ゲルライト、ゲルザンCM)の研究では、ケルコ社製ゲランガムが最も効果的で経済的な商品であると述べている15)。その試験では、ゲランガムabcHigh acyl gellan gum repeat unitAc High acyl gellan gum repeat unitAcO Gly OH OH OH OH図27 a?cゲランガムO Gly OH OH OH OHAcHigh acyl gellan gum repeat unitO Gly OH OH OH OHLow acyl gellan gum repeat unitLow acyl gellan gum repeat unitCH2OHCO O-M+ CH2OHCH2OHCO O-M+ CH2OHOHOHOHOH OHOHOHOHOH OH図28ゲランガム構造Low acyl gellan gum repeat unitCH2OH CO O-M+ CH2OH洋紙の地図と文書、及びその他の洋紙の収蔵品の保存と修復の挑戦63