ブックタイトル未来につなぐ人類の技15 洋紙の保存と修復

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概要

未来につなぐ人類の技15 洋紙の保存と修復

a和紙とカーボキシメチルセルロース接着剤を使用した1987年の修理図26.『アルトナ・ハガダー』の処置、LAC所蔵(BM674.6 A3 1763 xxfol)、ローリー作。bエタノールと水を75:25の割合で混ぜた溶液で再活性化させたゼラチン被膜薄紙を使用した2010年の処置(TBAB)処置が見込みがあると思われているが、結果はまだ実証されていない12)。5.ゲランガムゲランガム(gellan gum)は、高分子量多糖類系硬質ゲルである。ローマにある公文書・図書遺産保存修復中央研究所(以下、ICPAL)の図書材料保存修復室に所属するイタリア人保存修復家シモネッタ・イアンヌッチェッリ(Iannuccelli, S.)とシルビア・ソットジュー(Sotgiu, S.)により、2010年に開催されたアメリカ文化財保存修復学会(AIC)主催の紙本会議にて北アメリカ保存修復団体へ初めて紹介された13)。絵画作品の表面のきめ、刻印、エッチング線/彫刻線などの原形の特性を変えない湿式クリーニングを用いた代替法を探す研究により、2003 ? 2004年にかけてICPALで行ったゲランガムの初期実験に辿り着いた。ゲランガムは、隣接した基材に水分を徐々に放出して制御することができ、残余物を残さない。ゲランガムをクリーニングやシミ抜きに使用する際、水溶性の劣化物質は浸透作用によりゲルに転移する。イアンヌッチェッリとソットジューは、ゲランガムを用いて裏打ち除去、酵素の給付、脱酸、還元性漂白などの様々な処置を実施したと報告している。LACの保存修復家らは、彼らの発見に触発され、本や三次元地図から年代物の紙製ドレスにいたるまで様々な作品の処置にゲランガムを使用した。多糖類系硬質ゲルの使用は、彩色表面に対し、高度に制御された基礎的クリーニング方法として、2000年にリチャード・ウォルバース(Wolbers,62