ブックタイトル未来につなぐ人類の技15 洋紙の保存と修復

ページ
63/84

このページは 未来につなぐ人類の技15 洋紙の保存と修復 の電子ブックに掲載されている63ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

未来につなぐ人類の技15 洋紙の保存と修復

活版印刷複写本は、高い確率で劣化する傾向がある。19世紀の始めから1950年代まで初期の書類複写方法としては一般的であり、我々の文化的歴史に関連する重要な情報源であった。活版印刷は、版に塗布したインクを版と紙(加湿した薄い紙)が接触し、圧が加わることによって、紙へ転写させるものである。この際、文字は紙の裏面から見るため鏡文字になっている。これらの作品は、機械操作による損傷を受けている。進行した劣化状態の場合、紙はデジタル化のための取り扱いを行えるようにするため、再加湿可能紙でのみ修復することが可能である(図25a?d)。ジェーコブ・ローウィー・ジュダイカ(Judaica,J.L.)の特別コレクションのひとつである『アルトナ・ハガダー(The Altona Haggadah)』は、1763年に書かれた古文書で美しい絵が描かれており、評価査定のためにラボに持ち込まれた。1987年に没食子インクの腐食箇所は、和紙とカルボキシメチルセルロースを用いて修復されていたが、古文書の一部は劣化し続けていた。一時的に古文書の腐食したページは湿度を最低限に保つためにエタノールと水を75%と25%の割合で混ぜた溶液で再活性化させたゼラチン被膜薄紙で、物理的に安定化させた(図26a、b)。没食子インクの腐食には、銅を含んだ顔料に起因するものもある。この課題についての研究プロジェクトでは、前述のような腐食を安定化する処置方法を見つけることから取り組み始めた。予備試験では臭化テトラブチルアンモニウムa保存修復前b 2%のクルーセルGを使った再加湿可能紙cエタノールで再活性化させた薄紙d保存修復後図25凸版印刷複写簿の処置洋紙の地図と文書、及びその他の洋紙の収蔵品の保存と修復の挑戦61