ブックタイトル未来につなぐ人類の技15 洋紙の保存と修復

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概要

未来につなぐ人類の技15 洋紙の保存と修復

図16 a欠損部に繊維懸濁液をスプーンで流しいれる図16 bプラスチック・ブラシで繊維を圧縮するる二価鉄イオンは、セルロースの酸化において触媒作用をもたらす。1.有機ラジカル(organic radicals)の形成Fe 2+ + O2 Fe 3+ + O2・Fe 3+ + O2・+ RH→R・+ HOO・+ Fe 2+R・+ O2→ROO・ROO・+ R'H→RCOOH + R'・2.過酸化水素の生成Fe 2+ +HOO・+ H+ Fe 3+ + H2O2H2O2(過酸化水素)は、二価鉄によってヒドロキシルラジカルと水酸化物イオンに分解される。Fe 2+ + H2O2→Fe 3+ + HO・+ OH ?(フェントン反応)3)腐食の度合いは、インクの構成物とその量、紙の特性、収蔵庫の環境などによる。腐食は、二価鉄イオンが過多なインク付近の支持体の暗色化や脆性、もしくはインクの付着した箇所の亀裂や欠損として、容易に観察することができる(図17)。図17没食子インクの腐食のメカニズム過去20年間、没食子インクにまつわる問題に多くの関心が注がれていたことは、オランダ、ドイツ、アメリカ、カナダや他の国々で開催された様々な研究会によって証明された。いくつかの素晴らしい論文やウェブサイトでは、没食子インクの腐食に関するあらゆる観点からの情報や、処置手順が提供されている。特に、没食子インク・ウェブサイト(The Iron Gall Ink Website)洋紙の地図と文書、及びその他の洋紙の収蔵品の保存と修復の挑戦55