ブックタイトル未来につなぐ人類の技15 洋紙の保存と修復

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概要

未来につなぐ人類の技15 洋紙の保存と修復

よって制作されたものである(図8)。地図を加湿してから広げてみたところ、折り目が著しく汚れており、かつげっ歯類によるかじり跡も見受けられた。地図の大きさは、幅1メートル、長さ約2.5メートルで、紙質は非常に伸縮し易く欠損箇所は広範囲に及んでいた。各紙の位置と重複部分の形状を注意深く記録した後、重複部分にのみ水を塗布しながら紙を剥がすことによって、各紙の修復作業をより簡単に行うことが可能となった。図8『キングストンからグランド川における通水計画地図』、1816年制作、98.5 x 235.0 cm、ジョシュア・ジェッブ作、LAC所蔵(MIKAN 4518120)、保存修復前。まず、各紙の破れ目を生漉紙(Kizukishi paper)と小麦澱粉糊を用いて部分的な修復を行い、そして、前述のテリレンを用いた方法で2枚の長い灰煮楮紙(Inoue Haini kozo paper)を継いで作った1枚の裏打紙に直接地図を配置した。広範囲にわたる欠損箇所と紙の寸法変化を考慮して、各紙を十分に湿してからマイラーに地図の表面を下にして再配置し、裏打紙に移動させる用意をした。まず地図の半分を移動させ、薄めた小麦澱粉糊を地図裏面と裏打紙の上にスプレーし、接着させた。隠しの重複する縁部分から糊を除去し、再度小麦澱粉糊で接着した。貼りあわせた地図を乾燥させている間、地図にポリエステル系不織布と厚い吸い取り紙をかぶせ、さらに板と重しを載せてずれや糊離れが起きないよう注意した。乾燥後、裏打紙をテリレンから剥がし、形を整え、大型資料であることを理由に、保存容器に入れ収蔵した。(図9a?c、図10)。図9 aテリレンと和紙の裏打紙を準備する図9 b 地図を裏打紙に移動する図9c地図を吸い取り紙の下で乾燥させる図10『キングストンからグランド川における通水計画地図』、保存修復後。洋紙の地図と文書、及びその他の洋紙の収蔵品の保存と修復の挑戦51