ブックタイトル未来につなぐ人類の技15 洋紙の保存と修復

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概要

未来につなぐ人類の技15 洋紙の保存と修復

洋紙の地図と文書、及びその他の洋紙の収蔵品の保存と修復の挑戦アン・フランセス・メイヒューカナダ国立図書館・公文書館紙美術品、地図文書修復部門主任<序論>カナダ国立図書館・公文書館(Library andArchives Canada、以下、略称LAC)は、カナダの文書遺産を所蔵する世界一大きな収蔵庫である。2004年のカナダ議会法により、カナダ国立図書館とカナダ国立公文書館の所蔵資料を統合し設立された。LACには、2000万冊におよぶ書籍、定期刊行物、文学原稿、政府刊行物や16万7000メートルにおよぶ政府と個人文字記録、300万枚もの設計図、地図、図面の他、2400万枚もの写真、35万時間分もの映画、42万5000枚もの美術作品、54万7000もの楽譜、さらに10億メガバイト以上ものデジタルデータが所蔵されている。LACは既存の国立図書館の建物及び、カナダ各地に点在する連邦政府記録の保管用地方収蔵庫に加え、オンタリオ州都オタワとケベック州都ガティノーには、大部分の所蔵資料を保管する主要な建物が3棟存在している。LACのナイトレート・フィルム保管施設は、環境に配慮したデザインの建物であり、2011年に正式開館した。同施設ではカナダ最古の活動写真や写真ネガを含む、1912年以降制作された約6000本もの映画フィルムや写真ネガを21室からなる収蔵庫に保管しており、庫内は温度2℃、相対湿度25%に保たれている。また、カナダ国内で発行された新聞や第2次世界大戦の退役軍人記録は、背の高い仕切りのついた金属棚が特徴的な高密度の収蔵庫に保管されており、温度20℃、相対湿度40%に保たれている。LACの保存修復施設は、ケベック州ガティノーにある最先端の保存センター内に位置している。保存センターは1997年に、最低限の資材交換だけで少なくとも500年持ち、LACの様々な収蔵品の長期収蔵・保管で安全な環境を供給できるよう特別にデザイン・建設された(図1)。保存修復処置や記録の保存コピー、デジタル化作業を行う各研究室は、建物3階分の収蔵庫のすぐ上の最上階に村のように配置されている(図2)。保存センターには48室の収蔵庫があり、図1ケベック州ガティノー市のカナダ国立図書館・公文書館保存センター図2 LAC保存センター5階の様子洋紙の地図と文書、及びその他の洋紙の収蔵品の保存と修復の挑戦47