ブックタイトル未来につなぐ人類の技15 洋紙の保存と修復

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未来につなぐ人類の技15 洋紙の保存と修復

Netherlands Institute for Cultural Heritage,Condition rating for paper objects with iron-gall ink,ICN-Information,No.1,November 2001http://cultureelerfgoed.nl/publicaties/condition-rating-for-paper-object-with-iron-gall-ink(アクセス日2015/10/07).R. Bruce Arnold,ASTM's Paper Aging Research Program,Conservation OnLine,2003http://cool.conservation-us.org/byauth/arnold/astm-aging-research/(アクセス日2015/10/07).註1)主に日本・アジア地域で製作された「絵画」、「書跡・典籍」、「古文書」、「歴史資料」などに対する修理分野。平成7年に国の選定保存技術として「装?修理技術」が選定され、その保存団体として一般社団法人国宝修理装?師連盟が認定されている。12法人が加盟し約130名の登録技術者が在籍している。(平成28年1月現在)2)国によると「近代の歴史資料等の対象とする時期は、ペリー来航以降西洋の近代技術や制度等の受容が始まる開国の時期から、政治制度や社会制度に著しい変動が始まる第2次世界大戦終結時期までとする。」とされている。文化庁ウェブサイト「美術・歴史資料分科会関係(報告)」http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/hokoku/kindai_bijutsu.html(アクセス日2015/10/07)3)文化庁ウェブサイト「国指定文化財データベース」に列挙されている。http://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/searchlist.asp(アクセス日2015/10/07)4)ここでは、西洋の製紙技法に基づいた木材パルプを主原料とし、サイジング材や填料などを漉き込み日本国内で機械的に作られたものを指し、靭皮繊維を主原料とした日本で古来より作られている「和紙」に対して便宜的に定義して用いることとする。5)JIS P8120板紙及びパルプ-繊維組成試験方法-。今回の試験では、視覚的判断に基づき特徴の異なるものについて抽出し検査対象として実施した。6)日本工業規格(JIS)において上質紙について定義されている。1)科学パルプだけで製造した紙、2)原則的はその繊維の中に化学パルプだけしか含まない紙又は板紙をいう。とされ、参考として実際には他のパルプ繊維が少量含まれている事もある。としていることから、本史料の料紙も概ね上質紙の定義を満たしている。(参照:JIS P3101-印刷用紙A-、JIS P3201-筆記用紙A-)7)透かし、ウォーターマーク:針金等で作った文様を配置した漉網を用いて紙漉きを行う事で繊維の厚薄により文様が作られる。8)ノート料紙の測定は水濡れに影響が無いと判断された箇所に対してpHストリップ(メルク社製)による表面pHの計測を行った。指示薬が含浸させてある試験紙に1滴のイオン交換水を滴下し、余分な水分を除いたのち本紙表面に試験紙を押し当て、1分後の指示薬の変色でpH値を判断した。一方、水洗や水性脱酸性化処置を行った新聞紙などについては、pHストリップの他に(株)堀場製作所製ガラス電極式水素イオン濃度指示計D-54(pHメーター)を用いたpHの計測も行った。測定箇所表面に3滴イオン交換水を滴下し、3分後紙中の酸が水中に溶け出たところで水滴を拭き取り、再び2滴のイオン交換水を滴下した。そこに平面電極板によるpHメーターを1分間押し当てて指示値を安定させたのち測定した。9)没食子インク(iron gall ink):鉄の塩と植物由来のタンニン酸から作られたインク。西欧では5 ? 20世紀に広く使用された。含まれる鉄分の酸化により書かれた対象(紙等)が劣化し、インク部分の欠落といった障害が生じる。10)綴葉装:二つ折りした本紙を数丁ごとにまとめ(括)、これらを重ねて糸で綴じながら1冊にまとめる装丁方法。11)無線綴:背の部分に接着剤を使い、すべてのページをまとめて接着する装丁方法。12)中綴:二つ折りした本紙の折り目(中央部分)の2か所をホチキスでとめる装丁方法。13)ミシン綴:中綴じ同様、二つ折りした本紙の折り目部分で綴じるが、ホチキスではなく、文字通りミシンで一直線に縫い綴じる装丁方法。14)糸綴:二つ折りした本紙を数ページごとにまとめ(括)、これらを重ねて束ねた状態で綴じる装丁方法。15)山之上理加・加藤雅人・小笠原温「接着剤を塗布した和紙の力学的性質について」『文化財保存修復学会第36回大会研究発表要旨集』,2014,pp.224-225.16)流し漉きによって製作された和紙は抄紙時における繊維方向に応じてその強度に差が生じる。一般的な楮紙は長辺方向に繊維が流れており、長辺方向に対する力が強い。17)JIS P8115紙及び板紙-耐折強さ試験方法-MIT試験機法、JIS P8116紙-引裂き強さ試験方法-エメンドルフ形引裂き試験方法、JIS P8113紙及び板紙-引張特性の試験方法-第2部:定速伸張法、JIS K6854-3接着剤-はく離接着強さ試験方法-第3部:T型はく離試験18)大量脱酸性化処理技術として耐水性の無い資料に対して開発された手法。現在日本国内では、ガス式の気相法のDAE法(乾式アンモニア・酸化エチレン法)や非水溶性液相処理のBK法(ブックキーパー法)が実用されている。現在も欧米諸国を中心に開発試行が進められている。19)抗酸化処置。鉄イオンによる酸化劣化を抑制する物質を用いてセルロースの劣化を防ぐ方法。20)山之上理加・加藤雅人・小笠原温・中村春佳「ノートの背くるみ修復材料の検討」『文化財保存修復学会第37回大会研究発表要旨集』, 2015, pp.174-175.38