ブックタイトル未来につなぐ人類の技15 洋紙の保存と修復

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概要

未来につなぐ人類の技15 洋紙の保存と修復

ても氏本人によるものの可能性が高いという判断のもと、原則、落丁頁を復元する事はせず修理前の形状を留めた。6防護措置-無酸・無アルカリ・無サイズ製の間紙の挿入-フォルダ・保存箱新調史料へ直接的に作用する処置以外の対応として、無酸・無アルカリ・無サイズ製の間紙を必要と判断された頁に挟み込む対策を積極的に採用した。これはインクの二価鉄呈色反応値が比較的高い箇所や変色した酸性紙の色移りが見られる頁を主な対象とし、対面する頁の保護を目的とした。また各冊においては、有機酸の発生を伴わない中性紙製の保存用フォルダに収納し、既存の桐箱ではなく新たに作製した中性紙製保存箱へ10冊程度を1組として納入した。附属品および折畳まずに平置き仕様となった添付資料類は別収納とし、同様の箱を作製した。さらに、保存箱内には汚染ガス吸着シートやインジケーターを設置し、定期的なコンディションチェック時の指標とした(写真22?24)。その他、各冊に対する特に留意すべき内容は修理報告書に記載したうえで、保存箱へも留意点を抜粋した注意書を同梱した。4.おわりに以上述べてきたように、本史料の保存修理計画においては、1ノートに記載される内容を長期的に保存する。2現在の形状は鎌倉芳太郎氏が所持していた状況を伝えており、可能な限り現状を維持する。3劣化・損傷箇所への補修、脱酸性化処置等は最小限のものとし、予防的処置は行わない。いっぽう、安定的な環境、丁寧な取扱を確保し、定期的に保存状況を確認する。といった事項を保護すべき文化財的価値として位置づけ、関係者間で共通認識を持ちながら進めてきたが、このように史料の何に価値を見出し、何を将来へ継承していくかの見極めを持つという事が非常に重要と考える。多様かつ多量の史料が属する本分野においては特に、現在まで伝来されてきた姿に付随する諸価値を減ずることなく、将来にわたり保存継承していかなくてはならない点が基本的姿勢である。しかしながら、脆弱で不安定な材料が多写真22修理後1写真23修理後2写真24保存形態36