ブックタイトル未来につなぐ人類の技15 洋紙の保存と修復

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概要

未来につなぐ人類の技15 洋紙の保存と修復

写真18補修作業1写真20補修作業3写真19補修作業2写真21補修作業4る試験(剥離強度試験)では、新糊塗布とMCがほぼ同様の接着強度を持ち、HPCは極度に接着力が低く測定不能という結果であった(図1)。折曲げ部分の補強を想定した耐折強度試験では、HPCがその他のものよりも数値的には優位であった(図2)。各種試験や分析の結果から項目ごとの強度差を確認し、処置を行う各所、状況に応じた接着剤選定の判断指標とした。これに経験的な知見や実用性を加味し、欠損部の補填(繕い)、裂損部の補修(裂け当て)、折損部の補修(折伏せ)など、装?修理技術による直接的処置に使用する接着剤は、新糊(フノリを適宜混合)を主体的に用いる事とした。ただし、インク文字部分への補修の場合、水で希釈して使用する新糊は没食子インクに含まれる鉄イオンを拡散させる懸念があるため、エタノール希釈のHPCを原則的に用いて施工した。2 酸性化の著しい史料に対する脱酸性化処置劣化が著しく紙力も乏しい新聞紙に対しては、脱酸性化処置の実施は必要と判断されたものの、その手法については将来予想される事情も鑑みて選択した。例えば、その中でも特に劣化が著しく、裏打ちも行う必要があると判断されたものに対しては、将来その裏打紙を取替える際に水分を与える事が前提となるため、水濡れにより明度低下が生じる事で知られる酸化マ18)グネシウムを用いた非水性の脱酸性化処置は採用しないこととした。そのため、イオン交換水での洗浄を行った後、水酸化カルシウム水34