ブックタイトル近代テキスタイルの保存と修復

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概要

近代テキスタイルの保存と修復

代)の御座所を彩る内装である。壁面は琥珀色の光沢がある絹織物がクッションのようなふくらみを持たせて張られている。天井は菊と楓の模様を織り出した琥珀色の張地である。写真2は2号御料車(初代)の御座所の内装である。壁面には金茶色を基調としたビロード地が張らくもたてわくれている。カーテンは琥珀色で雲立涌と菊の文様になっている。写真3は6号御料車の御座所の内装である。折上二重天井の上天井にはしょっこう蜀江文様の織物が張られている。幕板には花びし菱文様の織物が張られ玉座の正面及び背面のみに十六弁表菊と桐が金糸で刺繍されている。椅子の張地は菊紋章と小葵文に天皇のみに使うここうろぜんとが許されている黄櫨染という色になっている。写真4は9号御料車(御食堂室)である。この車両の最大の特徴は妻に配された2枚の刺繍画である。鷹の鋭い眼光、羽の艶や質感、止まり木や鷹の脚に結ばれている組紐の立体感ははな圧巻である。このように、御料車に使われている装飾品としてのテキスタイルの保存と修復が話題となっている。保存に関しては、鉄道車両の保存に共通する問題とされているのがカビの問題であろう。一方、修復に関しては、踏み込んだ修復手法が取れていないのが現実であり、現状維持を目的とした処置が中心となっている。近代になって出現した新たな材料を使った衣服や装束、装身具に関しては、合成樹脂を多用したものが多い。それらのなかには、セルロイド製のボタンや天然ゴムあるいは合成ゴムを使った衣服などに劣化の問題が発生している。3.海外におけるテキスタイルの保存と修復事例調査研究を進めるにあたり、ヨーロッパのいくつかの博物館・美術館の修理施設あるいは収蔵施設の視察を実施したので紹介する(平成写真2 2号御料車(初代)鉄道博物館提供テキスタイルの保存と修復5