ブックタイトル近代テキスタイルの保存と修復

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概要

近代テキスタイルの保存と修復

塩化ビニルは、ゴム、革、ラテックスと同様の機能を持ちながら価格が安く、作品全体よりも一部衣類の合成素材としてよく使用される。劣化の徴候としては、可塑剤がポリ塩化ビニルの表面に達して化学変化を起こし、白っぽいブルームが形成される。可塑剤を添加すると、プラスチックが軟化し、柔軟性を帯びる。フタル酸エステル系可塑剤はフタル酸を形成する。劣化に伴って素材は“weep(涙)”を流し始め、素材表面に小さな滴が付着する。この液体は酸性で粘性があり、油状を呈する12)。ポリ塩化ビニルは、劣化して酸性ガスを生成する有機塩素化合物である。バイルシュタイン試験では、この厄介な素材の中に塩素の存在が認められる13)。ポリ塩化ビニル生地のドライクリーニングを行うと、可塑剤が除去されて表面膜の劣化を起写真10ポリウレタンのブーツReproduced by kind permission of the Bata Shoe Museum, Toronto, Ontario.66