ブックタイトル近代テキスタイルの保存と修復

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概要

近代テキスタイルの保存と修復

付け直しなど、それぞれの部分によって様々な補修方法を用いた。補修についてまとめこのようにKCIでの補修方法は、1つの作品の中でも、コンディション・構造・素材によって検討し、実際に補修を進める際には、作品の状態を観察しながら、できる限り可逆性のある方法で行うようにしている。また、素材や構造など、過去に類例があった場合はその時の補修と現状を再度観察し、参考にしながら補修方法を決定する。今後の課題として、第一に、薄地で透明度の高い絹やシルクチュール、糸などのより良い補修材料の入手が挙げられる。第二には、繊維以外の様々な素材が衣服に使われるようになったという近年の傾向も踏まえ、例えばゴム素材の脆化防止対策など、より長く作品を生かすための保存方法の工夫が挙げられる。また第三には、展示や経年劣化に対する処置の検討、そして、収蔵品の保管スペースの確保などが挙げられる。今後も積極的に情報収集しながら、また、将来的に保存・補修に活かすため、現時点の収蔵品の観察も大切にしながら、どう保存するか、どう補修するかといった問題と向き合い、貴重な資料をより長く後世に伝えられるよう努力していきたい。参考補修で使用した生地厚羽二重8匁アンダースカートのサテンに使用中肉羽二重6匁薄羽二重4匁アンダースカートのタフタに使用極薄羽二重2.75匁※1匁=3.75 g補修担当者谷智恵美塩野美津恵藤井久子上山尚子補修日数総計のべ約867日ウォルトのドレス(1900年頃)の補修と収蔵品の保存について59