ブックタイトル近代テキスタイルの保存と修復

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概要

近代テキスタイルの保存と修復

ウォルトのドレス(1900年頃)の補修と収蔵品の保存について公益財団法人上山尚子京都服飾文化研究財団保存・補修担当はじめに京都服飾文化研究財団、通称KCI(The KyotoCostume Institute)は昭和53(1978)年に設立された、西洋と日本の服飾(アクセサリー、下着類を含む)及び服飾に関する文献や資料を体系的に収集・保存・研究・公開する機関である。主に株式会社ワコールからの寄付によって運営している。現在、18世紀から現代までの服飾資料を約1万3000点、文献資料を約1万6000点所蔵している。KCI補修室には現在5名の補修スタッフが在任し、常時、保存・補修等の業務にあたっている。KCIの収蔵品は西洋衣装が中心であり、補修の仕事には服の構造についての知識と洋裁技術が必須である。KCIでの保存・補修のノウハウは、KCI設立当初の昭和53年頃にスタッフがニューヨークのメトロポリタン美術館コスチューム・インスティテュート(TheCostume Institute, The Metropolitan Museumof Art)に赴き、そこで学んだものをベースに収蔵品の保存まず、防虫処置についてであるが、KCIでは目視調査、バキューミング、一部の現代物に対しては有機溶剤を用いるドライクリーニングのほか、平成17(2005)年の臭化メチル全廃の影響もあり、平成14(2002)年から脱酸素処置を行っている。脱酸素処置とは、フィルムの中に収蔵品と脱酸素剤を入れて虫を窒息死させるやり方である(写真1)。この方法は2ヶ月以上と処置期間が長くかかるというデメリットがあるものの、人や環境に対して毒性のある薬剤を用いずに安全に処置できる点で優れていると言える。防虫処置を施した収蔵品は、温度20℃、湿度50%を目指して温湿度管理をしている収蔵庫で、紫外線・害虫・カビなどを避けて保存している。写真2は収蔵庫の写真であるが、例えば19世紀後半のドレスで比較的丈夫なものは、服の厚みや形に合わせたハンガーを作ってかけ、コンディションが不安定なものは、引きしているが、その後KCIで仕事をしていく中で新しい情報を取り入れ、最善であると判断する方法を吟味し、実施している。補修室の業務補修室の主な業務は、次の5点である。収蔵品の補修・収蔵品の保管・衣装を中心とした収蔵品の防虫処置・撮影や展覧会時の衣装の着装・衣装の記録撮影である。写真148