ブックタイトル近代テキスタイルの保存と修復

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概要

近代テキスタイルの保存と修復

テディベアやその他の多くの玩具の主な損傷は通常、使用に伴う汚れと埃、そして、夢中で遊んでいる最中に生じる物理的損傷や損耗である。それゆえに、V&Aに収蔵される以前に家庭で修理が施されていることも多くあるが、そのような修理の多くがさらなる損傷の原因になる場合も少なくない24)。過去1世紀の間、多くの玩具は、流行遅れになる前に、幅広い消費者層への売り上げを得るため、合成素材や高分子素材を用いて大量生産されてきた。そのような玩具は、使用による損傷が多いが、製造に使用された高分子素材の化学分解が損傷の原因になることを、コンサヴァターは保存修復処置の際に考慮するべきである2 5,2 6)。家具類に使われる新素材写真7写真6の展示用支持体上半身のマネキン、プラスタゾート、キャラコ、リジリンR、鋼とアルミニウム、そしてネット、綿、ジャージー素材を用いて組み立てられた映画『スター・ウォーズ』に登場する架空の宇宙船「ミレニアム・ファルコン」のケナー・トイズ社(Kenner Toys)製プラモデルと、この映画(1979年公開)の初期の関連商品の一つが、クリーニングのために我々のスタジオへ持ち込まれたことがある。宇宙船はひどく汚れており、埃だけでなく粘着性の物質が付着していた。処置計画を検討するため、素材の同定が必要となり、プラスチックは硬質ポリスチレンであることが判明した。また、船内の制御パネルには印刷された厚紙が使用され、外装の所々に印刷の入った粘着ステッカーが貼付されていた。ステッカーは、元の所有者が自分で貼付したものと思われた。宇宙船の粘着性の汚れや付着物は、プラスチックから移行した可塑剤ではないため、クリーニングは可能と考えられた。埃は掃除機を用いて除去され、粘着性の汚れは微量の脱イオン水を用いたが、ほとんど乾いた状態の綿棒で除去された27)。積み重ねのできる「プラスチック」の椅子をデザインするというアイデアを最初に発表したのは、ドイツの建築家でデザイナーでもあったルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ(Ludwig Mies van der Rohe)で、第二次世界大戦前のことであった。しかし、世界初の成型プラスチック製の椅子「パントーンチェア(Panton Chair)」(デンマーク語でPantonstolen)は、デンマークのデザイナーのベルナール・パントーン(Verner Panton)によって1960年代に作成された。その後、象徴的なデザインのプラスチック製の椅子は数多く作成されたため、それらが世界中の博物館に収蔵され、コレクションを代表する作品となっていることは驚きではないのである。1967年には、ザノッタ社(Zanotta s.p.a.)がふ今日のテキスタイル保存修復:ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館におけるテキスタイル・衣装・装飾品および関連作品の保存と展示45