ブックタイトル近代テキスタイルの保存と修復

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概要

近代テキスタイルの保存と修復

間である。一人ひとりにワークステーションが割り当てられ、溶剤や溶剤系接着剤が使用されるため、安全衛生規則に従い換気システムが設置されている。共用のテーブルやスペースのある広い作業区画もある。作品の染色や湿式クリーニングの設備、大型作品(タペストリー、ラグ、大型の壁掛け・吊り下げ作品)を処置する際に使用するタペストリーフレーム、バキュームテーブル、支持材とライニングの準備の際に使用する工業用スチームアイロン、そして、マネキン調整時に使用する木工用作業台および工具が揃えられている。また、マネキン、材料および保存処置前の作品を保管する倉庫もある。コレクションの範囲とそれらの製造技術の幅が広いため、V&Aのテキスタイルコンサヴァターが取り扱う素材は多岐にわたる。シルク、ウール、綿、リネン、その他の植物繊維、合成繊維(ナイロン、アクリル、ポリエステル)、多様なプラスチック(ポリエチレン、ポリスチレンなど)、その他の合成樹脂や合成ゴムなどが含まれる。テキスタイルに関連する素材は多種多様であり、衣装やアクセサリーではそれが顕著となる。例えば、天然ゴム、動物の角、骨、藁、体毛、鳥の羽根、羊皮紙、腸、ゼラチン、皮革、毛皮、魚の皮膚、貝殻、金属装飾品、ガラスビーズなどがある。保存修復活動テキスタイル、衣装、アクセサリー類(帽子、靴、バッグ、手袋や扇子など)、および家具装飾テキスタイルの保存と展示■質問保存修復や展示準備に向けて作品を受け取る際に、コンサヴァターが常に問う基本的な質問がいくつかある。それらに対する回答は、直接、コンサヴァターが作品の管理や展示のために行うべき処置に関するすべての判断につながるのである。質問例?作品は何であり、いつ製作されたものか。?どこの国で製作されたものか。?製作や装飾にはどのような材料が使われているか(テキスタイルには、異なる複数の素材が併用されていることが多く、それらが劣化する際に他の素材と反応する可能性がある)。?素材が何であるかを同定するための分析が必要か(蛍光X線分析法(XRF)、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)、X線透過撮影(X-Ray)、顕微鏡観察など)。?作品の状態。壊れやすいか、構造的に堅牢か、汚れているか、その汚れは何か、摩耗や損傷、あるいは欠損箇所があるか。?過去の修理。それらは作品の歴史において重要なものか。?作品の目的は何であり、コレクションに加えられる以前は、どのように使用されていたのか。宗教的な作品か。信仰、もしくはその他の特別な意味を持っており、保存修復処置の際に倫理的決断を下す必要があるか。?衣装の場合、それはどのように着用されていたか。修理はされているのか。完成品か。?展示とその期間はどのようにするべきか。長期間の巡回展覧会に加えるべきか。それとも短期間のギャラリー展示にするか。?展示の際には、展示ケースに入れる必要があるか。集めた情報は、次に続く処置の決定と作品を安全に展示する展示方法の選択につながる。そして、来館者が作品を理解し楽しむという最大の利益につながるのである。?作品のクリーニングは可能か。クリーニングするべきでない場合、理由はあるか。今日のテキスタイル保存修復:ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館におけるテキスタイル・衣装・装飾品および関連作品の保存と展示39