ブックタイトル近代テキスタイルの保存と修復

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概要

近代テキスタイルの保存と修復

今日のテキスタイル保存修復:ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館におけるテキスタイル・衣装・装飾品および関連作品の保存と展示マリオン・カイトヴィクトリア・アンド・アルバート博物館家具・テキスタイル・ファッション保存修復部門主任はじめにイギリス、ロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(Victoria and Albert Museum以下、V&A)は、間違いなく世界に誇る美術とデザインの博物館である。「博物館は、進歩と技術・機械革新を信じつつも、伝統工芸とその卓越した技法やデザインついても深く考慮する新しい産業国家イギリスの人々に力を与えた1832年の選挙法改正法案の可決後に興隆した自由貿易と革新主義の精神から生まれた」1)。1851年のロンドン万国博覧会は、当時のイギリスのデザインの多様性、独創性と優越性を世界に披露するための見事なショーケースとなった。万博で展示された作品は、後にヴィクトリア&アルバート博物館となる新しい産業製品博物館の基盤となったのである。そして、V&Aの建物の礎石は、1899年5月17日にヴィクトリア女王によって置かれたのである2)。V&Aは設立以来、毎年多くの作品を入手し拡大を続けており、現在では、これらのコレクションを見学するために年間460万人が来館している。V&Aは面積12エーカーの敷地に建ち、150以上の展示・公開ギャラリーを有する。約270万点のコレクションは国際的にも貴重であり、国立美術図書館(National ArtLibrary)、演劇コレクション、アジア・極東コレクション、および紀元前2000年頃から現在までのテキスタイル調度品、室内装飾品、衣装およびアクセサリーなどが含まれるテキスタイルコレクションもある。また、V&Aとは別に、東ロンドンのベスナル・グリーンには「子ども博物館(Museum of Childhood)」が置かれている。こちらはV&Aの重要な分館であり、子どもの衣装やおもちゃに関する一大コレクションを収蔵している。V&Aでは、国際的に優れたデザインの作品が毎年収蔵品として追加され、その多くが現代作品の展示プログラムの一環として展示される。未来プランと公開プログラム「未来プランと公開プログラム(Future Plan andPublic Program)」は、建物の改修と主要ギャラリーの改装、そして、一般市民向けの定期展示プログラムの現在進行中の計画である。計画の予定期間は3 ? 5年である。ギャラリーの改装、作品の展示ローテーションや再展示作業は、大規模ないわゆる「ブロックバスター型」の巡回展覧会の準備と並行して行われる。そのような展覧会の多くは、V&Aでの開催後から最大3年間にわたり、世界各地の会場で巡回展示される。2013年は、世界の22会場で開催された15の展覧会、英国内では16会場で開催された11の巡回展覧会に携わった。保存修復保存修復部門には約45人の常勤スタッフが所属し、彼らに契約コンサヴァターとインターンが加わる。保存修復部門が対象とする作品の今日のテキスタイル保存修復:ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館におけるテキスタイル・衣装・装飾品および関連作品の保存と展示37