ブックタイトル近代テキスタイルの保存と修復

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概要

近代テキスタイルの保存と修復

膨潤せず、劣化で固くなった繊維の力を補い、場合によっては柔軟性を与え、長期間にわたり化学的に安定しており、可逆的であり、変色せず、繊維の風合い、見た目を変えないことである46)。つまり、接着剤の条件は接着する際に必要な条件と、長期的に必要な条件の2点に絞られる。接着剤を選ぶ上での具体的な要素として次の点があげられる。?皮膜性:長鎖分子(高分子)は、短鎖分子に比べ、弾力性に優れた皮膜ができる。?機械特性:皮膜形成力があり、引っ張りに強く、弾力性があるものが望ましい。?酸とアルカリ:pHに敏感な繊維や染料があるので中性が望ましい。?熱可塑性:ガラス転移点(Tg)が高く、皮膜を熱可塑で接合できる。Tgが室温に近いと、皮膜の弾性と粘性が高くなる(ペタペタする)。しかし高いほど室温で皮膜が硬くなる。?溶解性:溶剤の含有率が高いとガラス転移点の温度が下がる。溶剤に分散している接着剤のガラス転移点は揮発の初期の段階で最も高い。湿度が高いと水が可塑剤として働いて接着剤が軟化し、染織品から接合材がはがれる原因になる。水性、油性、両性などの溶解性のうち、安全に取り扱えるものがよい。?長期的な化学的安定性が試験で証明され、文化財への使用が評価されている製品が望ましい。初期の例ではノルウェーのニーダロス大聖堂(Nidaros Cathedral)で発掘されたテキスタイルを5 %アクリロイドB72(アクリル系)(AcryloidB 72)、3 %ラノリン、0.5 %シダー油、0.2 %ビーズワックスのトルエン溶液の混合液に含浸させた報告がある(1956年)47)。また国立ワルシャワ博物館(NationalMuseum,Warsaw)のコプト裂図8シュバリエ・コンサヴェイションの自動制御による大型サクションテーブル(平成25(2013)年7月パリ)Reproduced with Chevalier Conservation’sauthorization.表5カナダ文化財研究所:テキスタイルと紙の処置のための水質(Tse 2002)40)処置などの用途紙、テキスタイルの洗浄、噴霧pH試験水溶液の作成(アルカリ緩衝剤など)漂白酵素ペーストやポルティス(湿布)リーフキャスティング、紙の作成提唱する水質イオン交換水、新鮮な逆浸透膜ろ過水、殺菌逆浸透膜ろ過水新鮮な逆浸透膜ろ過水新鮮な逆浸透膜ろ過水逆浸透膜ろ過水新鮮な逆浸透膜ろ過水新鮮な逆浸透膜ろ過水、蒸留水イオン交換水、逆浸透膜ろ過水、蒸留水イオン分析(pH、マグネシウム、カルシウム、塩素など)精製逆浸透膜ろ過水ガラス器の洗浄金属器の洗浄染色水道水の後に蒸留水または逆浸透膜ろ過水または精製逆浸透膜ろ過水逆浸透膜ろ過水、精製逆浸透膜ろ過水逆浸透膜ろ過水、精製逆浸透膜ろ過水近代におけるテキスタイルの保存と修復29