ブックタイトル近代テキスタイルの保存と修復

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概要

近代テキスタイルの保存と修復

逆浸透膜ろ過水)を提示している(表5)41)。一方、洗浄技術については、バットなどの溜め洗いが基本であるが、1970年代にサクションテーブルの開発で水を吸引して水の広がりを制御できる技術が普及し、部分的なしみ抜きや色にじみするテキスタイルの洗浄が行えるようになった42)。フランスとベルギーにはタペストリーなどの大型のテキスタイルが洗浄できる巨大なサクションテーブルがあり、自動制御でミストを噴霧しながら吸引し乾燥できる43)(写真8)。5.保存修復材料としての合成接着剤英語では繊維に液体の接着剤を含浸させる方法を「コンソリデーション(consolidation)」(凝固)、表面に接着剤を接合させる方法を「アドヒージョン(adhesion)」(接合)と区別する。接着剤を使用した補強は、繊維が著しく劣化した考古染織遺物、錫増量絹、鉄媒染で劣化したテキスタイル、顔料彩色布、樹皮繊維、合成素材、革素材などの不織布、靴、帽子などの立体や複合材料作品に対して行われている。日本で主流の澱粉糊と紙を使用したテキスタイルの補強方法は、欧米ではオリエンタルな手法として知られ、テキスタイルに行われるようになるのは1990年代後半からである。この方法は、水を使用するため「ウェットライニング(wet lining)」、または糊で濡らした和紙を上から落とすように貼るので「ドロップライニング(drop lining)」と呼ばれ、通常は紙のコンサヴァターと協力して行われる44)。または、サクションテーブルを使用してテキスタイルと紙を吸引して圧着させる事例もある45)。欧米のテキスタイルの保存領域で使用されている主な合成接着剤を表6に示す。接着剤は天然由来の膠やふのりも使用されているが、本稿では合成素材のみ取り上げる。最初に述べたように、数々の議論を経て、接着剤のガイドラインは次のように示されている。まず安全で簡易に使用でき、粘性が低く、浸透性がよく、溶剤が揮発しても最小限の収縮で収まり、繊維を表4テキスタイルの保存領域で使用されている主な界面活性剤(Fields 2009)39)製品名CAS No.種類主成分CMC濃度HLB雲点(℃)pHDehypone R LS45(Cognis)同成分:Leox CL-2008, 2010(ライオン(株))68439-51-0非イオンポリオキシアルキレンアルキルエーテルethoxylated propoxylated C 12-14alcoholsR-O-(C 2H 4O)n/(C 3H 6O)mH(n=12-14)表面張力:0.1 % 25℃30 dyn/cm0.06 % n/a 22 6.5-7.7Synperonic R 91/6(Croda)同成分:Laol XA 60-50(ライオン(株))68439-46-3非イオンポリオキシエチレンアルキルエーテルpolyoxyethylene(6)C 9-11alcohol0.06 % 12.5 48-56(52)6.6Imbentin C/135/070(Kolb)ー非イオンポリオキシエチレンアルキルエーテルPolyoxyethylene(7)C 13-15alchol0.06 % 11.9 45-49 5-7Hostapon R T(Clariant)97-80-3陰イオンN-メチル-N-オレイルタウラートN-methyl-N-oleoyltaurateC 21H 41NO 4S0.04 % n/a n/a 7-8Orvus R WA Paste(P&G)同成分:エマール0(花王(株))151-21-3陰イオンラウリル硫酸ナトリウムsodium lauryl sulfate(SDS)C 12H 25SO 4Na表面張力:0.1 % 25℃53 dyn/cm0.29 % n/a n/a 7.828