ブックタイトル御料車の保存と修復及び活用

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概要

御料車の保存と修復及び活用

まり汎用せず、ウールが一般的である。椅子の木枠に菊の御紋が彫り込まれていることから椅子の製作は日本で行った可能性が考えられる。また絹地の色は現在ベージュに見えるが、ひだの間を見ると淡いブルーが残る。御料車の製作については今後詳しい調査を期待する。カバーリング移送時には、家具類を持ち上げて移動することや、車体の振動で布の破れが拡大することが予想された。そのため、破損品を保護し、展示できる状態にすることを目的にポリエステルネットで破損個所をカバーリングした。1号御料車の椅子と壁面はポリエステルネットでカバーし、木枠と布に隙間がある場合にはネットを差し込み、それができない箇所はステンレス製待針で押えた(写真8、9)。ネットを差し込み、待針を刺せない椅子は、ネットを椅子の足に縛り付けて結わえた(写真10)。旧交通博物館では車内に出入りする扉が決まっており、絹地が擦れて破れていた。さらに、扉を閉めるために引っ張る紐も弱くなっており、このような部分もすべてネットで覆った。鉄道博物館に移設後もこの状態で展示されている(写真1)。古い写真を見ると、外から窓のブラインドのタッセルがぶら下がっていた様子が分かる。ブラインドは絹製で劣化しているため下ろすことができなかった。これも移設をするときに揺れて破損する可能性があったので、ネットで包んだ(写真11)。鉄道博物館へ移設後は古い写真のように、窓の外からブラインドのタッセルが写真6ダイニング用椅子左:クリーニング後右:クリーニング前写真5 9号御料車ダイニング写真7椅子のUV蛍光反応撮影左:ブラシとワイパー清掃後右:カビが蛍光している清掃前御料車の染織調度品の保存処置83